第十二話 後楽園でぼくと握手!

プロローグ

 後楽園……東京のどまんなか、水道橋のすぐそばにあり、今は東京ドームと遊園地が作られているけれども、小石川後楽園は江戸の名勝である。

 高層ビルとなった文京区役所からはこんにゃくえんまを見下ろせる。

 かつて、営団地下鉄丸の内線は後楽園駅、都営地下鉄三田線は春日駅に発着し、両者は少し離れていた。のちに都営大江戸線が開通し、以来、後楽園駅と都営地下鉄春日駅とは同一駅として扱われるようになった。丸の内線は後楽園駅の駅ビル二階のホーム、大江戸線は大深度に設けられたホーム、三田線は連絡通路を延々歩いた先のホームに発着する。また、南北線が、新しい地下鉄らしく大江戸線と同樣、とても深いところにホームを持っている。

 後楽園駅から水道橋駅までは、歩いても十分かかるかかからないか、である。が、後楽園のすぐ近くに勤務地があったとして、終業後に歩いて水道橋の日本書房に行こうとしても、日本書房は六時で閉店だから、五時半終業の会社だとそれに間に合わない可能性がある。駆け込みでぎりぎりセーフだったとしても、のんびり古本屋の棚を眺める楽しみは全く享受できないと考えた方がいい。

 後楽園駅の駅ビルには丸善ブックメイツが、文京区役所の地下にも何とかという小さな本屋がある。こんにゃくえんまの近くにはたしか貸本屋兼業の古本屋がある。が、本好きにはこんな土地で勤務するのは我慢ならないことであろう。本の目と鼻の先に神保町という本好きにとっては天国のような場所があるのである。地下鉄で二駅とはいえ、五時半終業では、帰宅途中ちょっと寄ろうとしても、もうほとんどの古本屋が仕舞ってしまっている。本好きがこんな土地で毎日仕事をするのは、「お預け」のポーズをずっととらされているようなもので、はっきり言って気が狂いかねない。仕事の内容がアレであったら、我慢ならなくなっても仕方のない事であろう。

 ちなみにこの項、やたらと説明が具体的だが、作者である野嵜のプライヴェートとは何の関係もない。ということにしておいてもらいたい。あるいは、もし関係があると思っても、ないものとして扱ってもらいたい。一々穿鑿するのは人のプライヴァシーを侵害する行為だから、やめてもらいたい。私は何を向きになっているのでしょうか。

 フェード・アウト。

タイトルロゴ

鋼鉄面皮デカイオー

なぜか新op

……

デカイアローはでかいだけ

デカイイヤーもでかいだけ

デカイウィングもでかいだけ

デカイビームは扁桃腺

……

なぜかキー局用とローカル局用のふたつのヴァージョンがあったりして。

CM

 さて問題です。私は誰でしょう。……云々、というしーえむが昔あったのをおぼえている読者はいますか? 別にどうでも良いんですけれども。

本編

 ロンドン・カイロ・モスクワ・ニューデリー・北京をめぐり、残るは東京とニューヨークの二都市。という訳で、ロボットレース篇もそろそろクライマックスにさしかかってきたのですが、さっぱり雰囲気が盛上りません。

 まあ、まだ七都市のうち二都市が残っていると考えれば、先は長いというか、千里の道も一歩からではなくて千里の道も九十九里を以て半ばとすというか、ここでまた半年も進行がストップしたら顰蹙ものですか。


 いま、デカイオーとガルベースは、日本海を渡りきり、福岡の海岸に辿り着いた。


 デカイオーのコクピットで、真木といづみは感動していた。。

「真木先生、日本ですよ、何年ぶりかの」

 いづみはほほを涙に濡らしていた。

「おお、再び日本の地を踏める日が来るとは思っていなかったよ。でもまだここは九州だ。早くおうちに帰りたいものだ」

 真木も、目の端に涙を浮かべていた。


 一方のガルベースのコクピット。

「ボスぅ、日本ですよ、何年ぶりかの」

 マリアンちゃんがサラダ煎餠を齧りながら、面倒臭そうにモニタをオンにした。

「おお、日本に着いてしまったか。ガルベースは何もしないでも勝手に飛んでくれるから助かるな。マリアンちゃんありがとう」

 トミーは、あくびを噛み殺したが、目の端に涙が浮かんでいた。

「ふふ、このガルベースには、世界ロボット振興会の衛星が発信する電波を受信して、最適な巡回コースをとる機能がついているのよ。おかげで乗ってる人間はする事がなくて暇で暇で」

「だからと言ってデカイオーのコクピットの盗聴をするんじゃない」

「でも、ボスだって聞き入ってるじゃない?」

「聞き入ってなどいない。音声が勝手に耳に入ってくるだけだ。しかし、心頭滅却すれば火もまた涼し! 耳に入ってきた音声が勝手に脳内に記録されたところで、私は決して盗聴などしようとはしていなーい。これは飽くまでマリアンちゃんが勝手にやっている事であり、わたしは既に何度も警告しているから……」

 意味もなくくどくどと説明を始めるトミー。

 しかしこの科白が、マリアンちゃんの説明的な科白を説明的に見えないようにするための作劇上の技術であると考える読者もいるのではないだろうか。もしそういう意地悪な読者がいるとしたら、既に警告した通り、このサイトに意地悪な読者は要らないので、即刻ブラウザの「戻る」ボタンを押すなり何なりしてどこかへ行ってもらいたい。

 そもそも、そんな意図で作者はトミーの科白を書いてはいない。作者の執筆態度はもっと好い加減だ。大体、一行書くごとに、作者は次に何を書こうかと考えこんでいるのである。話の先の展開はもとより、今書いた科白の意図ですら、作者は把握していないのである。

 詰まり、これらの説明は、すべて行数稼ぎでしかない、ということだ。ああ、十二話も話を書いてきて、読者もなぜか附いているというのに、私は何をやっているのだろうか。もっと読める小説を書くべきではないのか。

 まあ、真面目に読んでいる読者は一人もいないだろうし、適当でいいと思いますが。と言うか、真面目な読者は、この小説を見て目を覆っているだろう。アンチは喜んでいる事だろう。ただ、言っておくが、この小説の作者「fankee_jr」と、野嵜とは別人である。それは、ホランドとアレクセイが別人であるのと同じくらい確実な事である。深くつっこむな。それにしても私は何を書いているのだろうか。閑話休題。


 どうでもいいですが、「閑話休題」って、便利な言葉ですね。高島俊男氏によれば、「言帰正伝」も同じ意味だそうです。昔から、これらの四文字熟語には適当なルビを振るのが習慣のようで、「それはさておき」とか「はなしをもどして」とか、好い加減な読み方を指定する筆者が跡を絶ちません。

 マリアンちゃんが地の文にツッコミを入れました。

「いいかげんにしろ」

 私は「閑話休題」に「ぎょうすうかせぎもいいかげんにします」とルビを振りたいと思います。と言うか、この文書はISO-HTMLなので、ruby要素を使っていてはなりません。閑話休題。


 デカイオーとガルベースは、瀬戸内海を一生懸命飛んだ。


 和歌山に上陸し、紀伊半島を横断して、三河湾を渡り、東海道に沿って、二体のロボットは飛んだ。


 暇そうにしているマリアンちゃんが、片手でモニタを示した。

「左手に見えますのがぁ、富士山でぇございまぁす。身長3776めーとる。胸囲38きろ。内部には古富士と古御岳が埋っておりまぁす」

 あまりに暇なので、ガイドさんごっこを始めたらしい。

「富士は白銀、箱根はあかがね等ともうしましてーえーとーおー」

「妙に詳しい説明に、なげやりな嘘を混ぜるな。しかも、そこから先でネタに詰って意味もなくあーうー言うなー」

「あーうー」

「ほーほーほー」

「って、このネタのオリジンを知ってる読者、あんまりいないと思うYO!」

「作者もオタスケマンのedの歌詞で知ったくらいだからな。しかし、話が全然進まないな。本当に十三話で完結するのか?」

「十三話完結なんて誰が言ったの? 作者は別に何も言ってなかったような気がするけど」

「一クールで終わり、というのが妥当なところじゃないか?」

「妥当かどうかは知らないけど、最近のアニメは十三話で終ってすぐDVDを売り始めるわね。一年続くのはガンダムだけ」

「いや、ドラえもんとかサザエさんとか名探偵コナンとか、続いているのは続いているぞ」

「ドラえもんもサザエさんも、まともなアニヲタは観ないわよ。コナンはぎりぎりセーフかなーキッズステーションとかアニマックスとかで放送されるのはヲタ向けアニメ」

「例外もあるぞアンパンマンとか」

「ところであたしたちは何を話しているんですか。好い加減、話を進めてほしいわね」


 と言うか、話が始まらなくて困っているのは作者も同じだった。もっとも、話が始まってくれても困ると言えば困るのだったが。後楽園で何をするのかなんて、何も決めていないからだ。

 なんか、ハチャハチャ小説の横田順彌がハチャハチャを書く気を失ったあとに書いた「荒熊雪之丞シリーズ」終盤(SFアドベンチャー連載)のような雰囲気になってきた。奇絶、怪絶、また壮絶!!


 東海道をひた走り、ガルベースと途中で別れて、デカイオーはついに自宅に辿り着いた。

 田んぼの真ん中に建物がある。玄関のところに看板がある――真木国際漢文研究所。真木博士の秘密基地である。

 ああ、真木国際漢文研究所。

 夕方――夕陽が地平線の彼方に落ちていくのが見えた。

 ちなみにこの邊の行は、第一話からのコピーアンドペーストである――って、なつかしいギャグですねー。

 鉄筋コンクリートのビル。その背後にサイロのような巨大なデカイオー格納庫。どうして近所の人が怪しまないのか不思議なくらい怪しい建物だった。なのに、近所の人は誰一人、怪しいと思っていなかった。真木のキャラクターがそもそも怪しいという説もあるが、実は真木は引っ越してきたとき以来、近所付き合いをまめにして、村八分の目に遭ったりしないように注意していたのだ。その努力の甲斐あって、美少女・いづみちゃんが住み込むようになっても、真木はロリコンと非難されないで済んでいた。説明が長い。くどい。閑話休題。すみません。

「久々の我が家だなー。このままレースを抛棄して、漢文の研究を再開しようかな?」

 いづみのいれたコーヒーをすする。

「それはいい考えですね、真木先生。わたしも好い加減、こんな下らないレースなんてほったらかしにすべきだと思ってきたところです」

 真木に同調するいづみ。

「しかし……男は、一度決めた事は最後までやり通さなければならないものなのだよ。論語で孔子も述べている事だ。どこの何という科白だかは忘れたが」

 もちろん、作者が資料を漁る手間を省いたのである。

 にもかかわらず、いづみは感動した。

「さすがは真木先生です。わかりました。最後までレースに参加しましょう。どれほど時間の無駄であるかはわかっていますが」

「いや、一々作者のしている事を否定するような文句を吐かんでよろしい。指摘するまでもないことだ」

 うるさいよお前ら。


 一方、こちらは西武新宿線鷺の宮駅近く――鉄筋コンクリート12階建の堂々たるビルディング。表に、トミー国際発明研究センターという不敵な看板がかかっているドクター・トミーの本拠地。トミーと書いてあるが、ドクター・トミーとは無関係である可能性があると言い張る意地悪な読者は、もはや排除されている筈だし、と言うか、好い加減、くどいだけで面白いとはとても思えないギャグをだらだらと書くのは止めようかと思う。

 トミーは今、「所長」と書かれた席に座っていた。もっとも、「所長」と書かれているが(以下略)

「なにもかも昔のママね。って、なんかママを片仮名で書くと銀座のバーのママみたいに見えるけど。どうせだからボスが所長の席に坐っている時は、ボスと呼ばないでママと呼んでみようかしら。トミーママ」

「やかましいわ。誤変換をネタにだらだら下らない科白を作るんじゃない」

「ボスぅー誰に文句を言ってますか文句は作者に言わないであたしに直接言ってくれませんかさびしいですぅ」

「で、これからどうしようと言うのだ? 好い加減、この下らないレースが下らないということに気付いたらどうだ? 下らないのなら時間の無駄であり、時間の無駄は我が発明人生にとって全くの無駄だから排除せねばならぬ。だいたい、まともな人間が、あんな怪しい案内状一枚に乗せられて、世界一周レースに参加したりなんかするか? もうあの無駄な何年間は忘れて、地道に発明を続けて一発当てた方がいいんじゃないか?」

「同語反復を大量に含みつゝ、矛盾した内容を持つ科白を、発明研究センターの所長たるボスが吐くもんじゃあーりませんよ。いやいや!」

 マリアンが身体をくねらせた。

「うるさい黙れ。俺はもう、レースネタには飽きたのだ。これからは当初の構想に立返って、毎回だらだらと真木のデカイオーと対決するだけで十分だと思う」

「いま、非常になつかしい拗ね拗ねモードを再現したのだけれども、ボスは何も感じなかったの? いや、変な事を感じてほしかったのではなくて、なつかしさをかんじてほしかっただけだけど」

「あのな、なつかしいだけで小説は受容れられはしないのだよ。センセーショナルでエキサイティング、かつスリリングな内容でなければ、今の時代、ジュニア小説はナウなヤングに受けるものではない」

「ナウなヤングって何よ? ろりぽっぷさーばー? まったく、ボスも下らないわね。作者が下らない事を言わせているだけだけど」

「あーマリアンちゃん、お前は俺を責めているのか、それとも作者を責めているのか?」

「どっちでもありません。あたしの責めているのは鉄の……」

「金も銀もやらんから」

「そういえばあたし、ボスから給料を貰った覚えがないんだけど」

「何なんだよこの展開と言うか毎回だらだらと真木のデカイオーと対決するという初期のコンセプトがそもそも問題だとは思わんのか」

「どんどん深みにはまってるわねあたしたち。と言うか作者」

「閑話及第」

「誤字。閑話休題畫聖界」

「作者のWXGの辞書は何を学習しているんだ蝋」

 フェードアウト。


 ふぇーどいん。マリアンちゃんが闇の中に白く浮び上がる。

「徒に書く! もとへ、とにかく! 後楽園に行かないと、題名が嘘になってしまうわ。それだけは避けないと。というわけでボス、しゅっぱつよ」

「お前、科白が棒読みだぞ」

「と言うか、作者がいま、必死になってお筆先で紡ぎ出しているてきとーな科白を棒読みできるあたし萌え」

「萌えねえよ」

 マリアンちゃんとトミーはかせ。ふぇーどあうと。


 デカイオーとガルベースは、後楽園の前の道路に降り立った。車が続々と二体のロボットの足に激突し、周囲は渋滞した。どうでも良いが、「似体のロボット」なる誤変換は示唆的だ。二体のロボットは、雰囲気が良く似ていた。とにかく、へんだった。

 その時、後楽園のドームが開いた。普通の後楽園のドームは開かないが、この小説の後楽園のドームは、開くのだ。なぜ開くのか。理由は作者も考えていない。ただ、何となく、ドームが開いて、中から福留ロボが出てきたら、おもしろいかなーと思っただけだ。

 福留ロボが言った。

「では、スタンプを押します。並んで下さい」

 デカイオーとガルベースは、先を争って並んだ。どっちが先でも良いような気もするが、真木とトミーにはこだわりがあった。

 デカイオーが先だった。

「ふ。トミーよ。スタンプは先に押して貰ったぞ」

「何を!」

 二人の気○○○博士は睨み合った。(モニタ越しに)

 いづみが例によって感心し、マリアンはあきれた。

 スタンプを押しおわると、福留ロボが叫んだ。

「ニューヨークへ行きたいか?」

 二人の博士は、言い争いをやめ、一緒に叫んだ。

「おおー」

「罰ゲームは恐くないかー?」

「おおー」

「もう一度聞く。ニューヨークへ行きたいか?」

「おおー」

「声が小さーい」

「おいーっす!」

「もう一丁、おいーっす!」

「おいーっす!」

 いつの間にか、福留ロボはトランスフォームしていかりやロボになっていた。

「話の展開が読めない」

 調査に来ていたドクター秋本の部下、例の眼鏡っ娘メイドがこの光景を目の当たりにして、頭を抱えていた。

次回

 おはようございます。ドクター秋本の部下の眼鏡っ娘メイドです。シリーズ終盤にいきなり登場したわたくしですが、もう覚えていただけましたでしょうか。もちろん、覚えている人はいないでしょう。そんなにもわたくしの印象は薄いのです。でも作者は、萌え要素の詰ったわたくしのようなキャラクターを投入して、この小説の梃子入れをはかっているのです。優しい読者の方は、作者を好意的な目で見守って下さい。意地悪な読者は要らない、と作者は申しております。

 次回「ビッグ・アップル」。

 無駄なまめちしき。「今日も何処かでデビルマン」をかつて樋口了一がカヴァした事があります。FM FUJIのPower ZZZで弾き語りもやりました。昔のFM FUJIは愉快な番組がたくさんありました。だから何だと言われるかも知れませんが、わたくしは深夜ラジオが好きな眼鏡っ娘メイド部下という設定なのです。作者の中の人には、思いつきでキャラクターの性格を決めるのはやめてもらいたいものです。と言うか、作者は前の晩、合計二時間も寝てなくて、今朝も徹夜あけだったりするのですが、そんな時に小説を書かないで下さい。早く寝ろ。それではまた。

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