第十一話 この街は病んでいる

プロローグ

ひゅるるるる。風が枯葉を運んでいく。

「病んでいる……」

 真木である。

「この街は病んでいる……アイデンティティーのナルチシズムが……」

「ねえ先生、めじゃーな雑誌に載った割にはマイナーな漫画のねたをやるのはやめましょうよ」

 いづみのつっこみである。

「と言うか、誰もわからんのではないかと危惧するのだがね」

「いまじゃ、吾妻ひでおよりあずまんがの方が有名ですしね」

「何か今、『有名です氏ね』と作者のIMEが誤変換したような気がするが、萌える」

「萌えないでください。キモいです」

 吾妻ひでおも、萌えとはある意味、対極の存在ですねー。阿素湖に萌える奴はいないでせうね。

 フェード・アウト。

タイトルロゴ

鋼鉄面皮デカイオー

op

例の主題歌。

CM

いいかげん、「あにめぱろでぃ小説」なる枠組みもとっぱらいたい気分。

どうせだから「投げ銭」システムでも導入して御布施を集め捲ろうかなー。集まるかい。

本編

 最初に白状しておきます。またもや長い間、新しい話を書いていませんでした。そのせいで、当初予定していたネタは、当然のように風化しています。舞台が北京で、「この街は病んでいる」なので、例のSARSと絡めて何かする積りだったんですが。

 というか、「ガルベース」なんて風化しまくりですし、ねえ……なんか今年は阪神が優勝してるし(関係ない)。

 とりあえず、愚痴っていても仕方がないので、ストーリーを再開。


 そんなこんなで北京。ガルベースは、例の如く、人民服のコスプレです。

「こすぷれいうなー」

 マリアンちゃんが喚いた。

「コスプレではない、マスカレードなのである。HAMACONではそういうことになっていた」

 トミーが呟いた。

 しかし、コスプレはコスプレとして定着してしまっている。一度定着してしまった用語は、誤用だの何だのと言われても、簡単にはなくならないものなのだ。困ったものです。

 と言うか、なぜHAMACON? トミーはSFファンですか? 余談ですが、野嵜はHAMACONに参加しました。正直、あんまり面白くありませんでした。閑話休題。

 今回は、紫禁城――故宮の中に、例のスタンプコーナがあるという噂。

 噂? そう、噂なのだ。

「情報の出所は確かよ。香港からマレーシアを経由して台湾系の某情報屋から仕入れたもの。間違いは絶対にないわ」

 マリアンちゃんが、例によって意味もなく狭苦しいコックピットの中で胸を張る。当然、ずりずりとトミーの顔に以下略。

「しかしマリアンちゃん、お前の情報網っていったい……」

「聞いて良いことと悪いことがあるのよボス。これは聞いてはならないこと」

「何しろ作者も全然考えていないことだし、ってか?」

「何が、ってか? よ。あなたは馬鹿ですか? そんな厨っぽい喋り方をするもんじゃないわよ人格を疑われるから」

「お前にだけは言われたくないなあマリアンちゃん。お前、初期の設定ではあっぱらぱエセ外人の筈だったのに」

「エセ外人はお互い様ね。ボスだって本名が「○○とみ」だから「トミー」ってハンドルなんじゃない」

「何だよハンドルって?」

「違うの?」

「トミーは本名と言うかトーマスの愛称がトミー」

「じゃ、苗字は? トミーはファーストネームよ」

「えーとだな……って今はそういう話ではなくてだな」

「ごまかすな」

「ごまかしてんのはお前だマリアン」

「トミーは卑怯者、っと」

「何を!」

 なんだこりゃ。

 ……などとコックピットの二人が論争している間に、ガルベースは天安門広場に降り立った。

 またしても余談だが、天安門広場のあの石畳の敷石を剥がすと、その下はトイレとして使えるようになっているそうである。ちなみにガルベースの足は今、敷石を粉砕して地面にめり込んでいる。……。


 さてこちらは真木といづみのデカイオー。

「北京か……なにもかもなつかしい」

「なつかしいうなーと言うか真木先生、北京には初めてのはず」

 いづみが例によってつっこみを入れた。真木は、人民共和国ではなく、民国に留学した。第七話を参照されたい。

 しかし、真木はごまかした。ついでに自分の登場している小説も馬鹿にした。

「細かいことを気にしてはいかんよいづみ君。特にこの小説では」

「それは……この小説では矛盾も何も気にしていたらやっていられませんけれどもー。でも、取敢えず一度立った設定は尊重すべきだと思います」

「いや、『なにもかもなつかしい』はヤマトからの引用で……」

「いいかげん、パロディからは離れましょうよ」

 ……などといんちきで字数稼ぎ以外の何物でもない会話を交わしつつ、二人の乗るデカイオーは天安門広場に降り立った。

 当然の事ながら、デカイオーの足も以下略。


 皆さんお気付きですね、ガルベースとデカイオーは、例によってはちあわせです。まんねりいうなー。


 例によってコックピットから外に顔を出して挨拶する一同。まぬけですねえ。

「こんにちはー」

 いづみが屈託のない笑顔を見せる。

「ああ、こんにちは」

 マリアンが何か疲れたような表情で応えた。

「やっぱり北京と言うと天安門ですかそうですか。作者もスノビズムに冒されてるな」

 トミーが呟いた。

 話が停滞しまくっている間に、トミーとマリアンはぼやきキャラへと成長を遂げたようだ。

「馬鹿者。そんな事を言う資格がおぬしにあると思っているのかトミーよ。イギリスで自分がいかにスノッブ感溢れる描写をされていたか、おぬしは忘れてしまったのか。おぬしは馬鹿か」

 真木が畳み掛けるようにトミーを罵る。今回はトミー、やたら馬鹿馬鹿と言われる。

「スノッブか……そもそもあにめぱろでぃというあたりが露骨にスノッブだしなあ……いいかげん、デカイオーも俗悪小説もどきのスタイルをやめて、高尚な文学へと脱皮すべきではないかな?」

 寂しげに微笑みながら、トミーが呟いた。

「それは無理。というか、文学作品に漢文教師は存在可能だけど、愉快な死ね死ね団団長はちょっと雰囲気が合わないんじゃないですか?」

「愉快な死ね死ね団などと言うんじゃない。私の表の顔は飽くまでトミー国際発明研究センター所長なのだ。と言うかマリアンくん、きみは秘書だったのではないか。そういう設定だったような気がするがね。すっかり忘れていたよ」

 いつの間にか枯れきったキャラクタになったトミーである。

「初期の設定なんてもう、読者も忘れているわよ。というか忘れてほしい。あっぱらぱマリアンちゃんとか呼ばれていたんだわねわたし……」

 二人が前より大人っぽい会話を交わしている間、真木といづみはデカイオーに装備されているネット閲覧専用モニタで「鋼鉄面皮デカイオー」の初期の話を読み返していた。

「……これは……ちょっと非道いかも……」

 青ざめつつ画面から視線を外すいづみ。

「なに笑っているんですか先生!」


 ……などと、字数稼ぎ以外の何ものにもなっていない会話を四人がだらだらと続けているうちに、周りを支那人が囲み始めた。

「おまえら邪魔だー」

「そこをどけー」

 おなじみ、邪魔者扱いである。

「ん? 何か足下が騒がしいな?」

 何をいまさらというタイミングで、わざとらしく騷ぎに気づいて見せるトミー。

「科白棒読みよボス。小説の科白で、棒読みも何もあったもんじゃないけど」

「お前ももう少し、演技をしろよ」

「演技ったって……本来あっぱらぱの陽気なエセ外人であるこのあたしが今、いかにも乗りの悪いキャラなのは、演技なのではないかとか、思ったりしない?」

「しない、しない」

「えー。しないですかそうですか。それはつまんないなー。ボスこそ変に枯れきって、こっちだって張り合いが全然ないんだけどー」

「知るかよ馬鹿女」

「あーなつかしいボスの罵倒の科白。でも何だか今までと違って妙に投げやりに聞えるのは何故?」

「投げやりに言っているからだよ。しかしだな、さすがに作者の方もそろそろかつてのノリを憶い出してきたような感じだぞ」

「そうね、いよいよテンションが上がってきたって感じね何しろこの無意味な会話がえんえんと続きかねない勢いが平然と現われてきたのがその証しでもいいかげんこの会話、切上げないと危ないんじゃないかと思われ」

「思われ、って何だ?」

「2ちゃんねらー用語よ。でもあたしは厨房じゃないからNE!」

「香ばしい香具師だな」

「だーかーらーそんな2ちゃんねらー丸出しの会話なんかしていないで、下を見てよ、というか、騷ぎには気づいているんでしょボス? それとも、あたしの話に魅了されて外のことなんか気にならなくなっちゃった?」

「お前になんか魅了されるかよ」

 マリアンはちょっとだけ傷ついたような顔をした。

「あたしのことなんかいいから! ちゃんと外を見てよボス。ちゃいにーずどもが束になってかかってきているんだから!」

 という訳で、地の文が遮る隙もないほどだらだらと続いた会話にしびれを切らした支那人が、人海戦術でガルベースを排除し始めたのである。

「うわっ」

「きゃあ!」

 ガルベースは押し倒されてしまった! さすが、人口十億の中華人民は恐ろしいのである。

 しかし。

「おいマリアンちゃん。こんな人の海の中でガルベースが倒れたら、やばいんじゃないか?」

「……ヤバいわねというかどうなっちゃったかはっきり書くとこの小説、どっかからクレームがつき兼ねないわね。ただでさえのあたんの文章、クレームが多いのに」

「しかしもう、倒れちゃったもんな……どうするマリアンちゃん?」

「仕方ないわ! もう、しゃきっとして、ボス! とりあえず逃げるのよ!」

「逃げるのか! よし、まかしておけ!」

「逃げるのだけは得意なんだから……」

 という訳で、ガルベースは強引にその場から脱出した。被害者は増大した。

 そして、支那人は暴動を起した。ガルベースが原因で再び天安門事件が起ったのである!


 ちなみに、デカイオーはさっさと退去していた。


「ところで真木先生、私の情報網によると、スタンプは上海で貰えるそうです」

「おおそうか、さすがはいづみくん。さっそく上海に向かおう。しかしいづみくん、きみの情報網っていったい……」

「聞いて良いことと悪いことがあるのですよ真木先生。これは聞いてはならないことなのです」

「そうかそうか。では出発だ」

「しゅっぱーつ!」

 デカイオーは、せやっ! と気合を入れると、上海へ向けて飛立った。

 ちなみにデカイオーが天安門広場に降り立ったのは、記念写真を撮るためだった。


「ところで実はだないづみくん、先日『R.O.D』の小説版を読んだのだ」

「はい?」

「見事に舞台がかぶっていたな……まともに勝負したら、『デカイオー』なんぞでは『R.O.D』にかなわんぞ」

「いやわたしたち、櫻花さんのとは別の話なんですから、『R.O.D』を目の敵にする必要はないと思うんですけど」

次回

 えーと、例によって先の事なんか全然考えていませんので、次の話もどんなものになるんだか、全く予想がつきません。多分真木先生たちもトミー氏たちも一度うちに帰って、下着でもとってくるんじゃないですか。デカイオーとガルベース、地球を一周するのに数年がかりですからねー。いいかげん登場人物たちも、おうちに帰りたいとか思っているかも知れません。

 どうでもいいんですが、「地球を一蹴」と誤変換するうちのIMEにはまったくもって萌え萌えです。SKKに乗換えれば、何とかなるんでしょうか江洲さん。いや、江洲さん、こんな腐れ小説もどきなんて読んでいらっしゃらないかも知れませんが。まあ、何というか、今回はいつにもまして文章がへろへろな回でした。要リハビリ。

 次回「後楽園でぼくと握手!」。今年中に「その次回なるもの」でお会いできたら嬉しいですね。それでは、さよなら、さよなら、さよなら。

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