制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
初出
「闇黒日記」平成二十一年十二月二十日
公開
2010-02-28

新藤謙『きだみのる』(評傳)について

新藤謙の評傳『きだみのる』(リブロポート)を讀む。

新藤氏はきだを優れた「分析者」として評價してゐる。一方で、その思想を生れや育ちで心理的に説明し、甘さを客觀的に指摘する。きだの思想的なぶれ・一貫性の缺如を、新藤氏は不滿に思つてゐる。そして、左翼らしい冷たい論理と理論によつて、きだを裁斷する。私の新藤氏への不滿は其處にある。さうした行き過ぎた評價の部分を除けば、きだの思想や態度を要領良く纏めてゐるし、きだの生涯を通して概觀してゐるので、便利は便利である。

きだの示した「部落」なる小社會は、非常に示唆的で、其處に見られる問題は現在のウェブ社會に見られる問題と案外共通する。新藤氏の評傳は兔も角、きだの著書はいろいろと考へさせられる事が多い。もちろん、不出來のもの・駄目なものも「ある」事は「ある」が、『につぽん部落』(岩波新書)等は讀んでおいて損は無いと思ふ。

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