制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2011-01-17

『日本の将来 総評のすべて』

書誌

まえがき

日本の労働組合運動は、他のもろもろの政治・社会運動と同じように、国際的な影響を受けるところが大きい。組合運動の方向は、国際的な組合運動の政治勢力の動きによって動揺するところもある。現在のヨーロッパ共産主義とよばれるイタリア、フランス、スペイン等にみられる共産党の修正主義路線は、日本の共産党にも強い影響を及ぼしている。総評の中におけるイデオロギー指導の主要勢力たる社会主義協会派は、日本共産党の修正主義的傾向に対して批判的であるが、はたして総評の運動方針が、なおいつまでも十九世紀的階級闘争主義から離れることのできないものか、政治闘争ときりはなして、経済闘争にその方針を切りかえることができないものかどうか。これからの総評にとっての大きな問題であろう。

しかし総評を理解するには、単にそのイデオロギー的偏向の根の深さを指摘するだけでは不十分である。本文の座談会における発言者の言葉から察知できるように、労働組合運動に未熟――ことに官公労の領域において――であった歴史的な事情、指導者のイデオロギーに引きずられやすい日本人一般にみられる受動的性質、あるいは政府・自民党の当局者たちがその場その場のかけひきから安易に紛争を処理しようとする無責任な取引き、あるいは高度経済成長がゆるした組合運動にたいする甘さ等、いろいろな事情があったことも見逃すことはできないであろう。

本書では、「総評のすべて」を理解するために、まず、戦後の労働組合運動の一般的事情を知ることから出発し、さまざまの曲折を経過しながら、左翼的指導理念のもとに、総評が結成されてくる過程を議論してもらった。出席者はいずれも日本の労働組合運動の結成に直接かかわってきた人たちである。

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