また、本書は、福田恆存先生、林健太郎先生をはじめとする諸先達が、冷戦時代の激動期に手鹽に掛けて育ててこられた高木書房の、冷戦以後の時代へ向けての再出発の、最初の出版物である。
冷戦時代のイデオロギー対立が、日本国内にも数多くの政治的タブーを作りだし、知識人たちがしばしば沈黙と隷従を強いられるなかにあって、福田、林両先生をはじめとする諸先達は、言論の自由の旗を高く掲げ、いかなる政治的・思想的圧力にも屈することなく勇気をもってタブーへの挑戦を続けられた。この知識人としての精神の強靱さと、その思考力、判断力の高さは、日本の知的伝統としていつまでも受け継がれていかれなければならないものであると確信する。