制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2011-01-18

林健太郎編『革命の研究』

書誌

趣旨

高木書房で大分前から座談会形式による本のシリーズを出しておりますが、このたび歴史のことについて何かできないかという話を私に持ってこられました。私は歴史というのはなかなかそういうものになりにくいのだといってお断りしたのですが、更にすすめられてやることになりました。

そこで、考えましたのは、革命とは何かということです。そういうことを思いつきましたのは、戦後の日本には、革命というのは大変いいことで、革命でないのは悪いことだというような風潮の時代がありました。そこでは、ロシア革命というものが現代の始まりで、そこで始まった社会主義とか共産主義とかいうものが未来社会の手本だというようなことが言われていました。しかし最近ソ連という国は大へん人気がなくなったので、そういう考え方も一部の人を除いてはなくなったようです。そうであればあるほど、ロシア革命とはどういうものだったのか、そのありのままの姿とか、いまの社会に対する関係とか、そういうことを歴史の事実に即して考えてみる必要があるのではないかと思ったわけです。

ところで、戦後はやったロシア革命崇拝は資本主義から社会主義へというような唯物史観の発展段階説から起ったもので、プロレタリア革命としてのロシア革命を重視すると共に、ブルジョア社会をつくったブルジョア革命としてフランス革命を讃美する。そういう段階論とそれに基づいた価値観がかなり固定的に定着して、そこから一種の革命神話が生れた。そして西ヨーロッパ的なものの一番代表的で、そういう意味でお手本になるのがフランスで、フランスは革命をやったから大へんよい、反対に日本なんか革命をやらなかったからいけないのだとかいうような式の考え方が、いまでもないこともないと思います。

そこで革命を考える場合には、やはりまず最初にフランス革命というものをとり上げなければならない。そしてそういう唯物史観的な意味を離れても、フランス革命というものは確かに世界史上の大事件で、そこには近代社会の持っているいろんな問題が提出されていますし、また政治と人間というようなことについて大へん面白いことがらがたくさん現われています。そこでこの革命については、これまでにフランスで実にたくさんの研究が行われているわけですが、そういうものに則して、フランス革命に関する見方、考え方、そしてその実態というものをもっと日本人に知ってもらう必要があると思うのです。それはまたこれから西洋史の勉強をしようとしている人にとっても大へん有益なことだと思います。

そこで、まずフランス革命については、長年フランス革命の研究をしておられる前川(貞次郎)さん、ロシア革命についてはこれも専門家の勝田(吉太郎)さんに案を立てていただきました。それからフランス革命とロシア革命を論ずる際には、やはりドイツをとり上げないわけにはゆきません。ドイツはフランスやロシアのような革命を経ていませんが、この両方から大きな影響を受け、革命が起ったが失敗したという歴史があります。そして初めはフランスからのインパクト、後にはロシアからのインパクトが非常に強く、その下に自分自身の社会をつくってきているという関係もあります。そこでこの本は、三つの部分に分かれまして、それぞれフランス、ドイツ、ロシアをテーマにした座談会になるわけであります。

……。

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