素子さんは母や祖父母、伯母の愛を十分に受けて幸せに育てられ、長じて父と同じ立教大學を優秀な成績で卒業し、又日本舞踊を修め、昭和四二年には靖國神社の拜殿で「櫻變奏曲」等の舞を奉納して父君の霊を慰めた。このことも(學徒出陣五十周年)特別展示の機會に広く知られる樣になつた。九段へゆくごとに<心に深く念ずれば、必ずお父樣のお顏がお前の心の中に浮かびます>という亡き父上の言葉を實感されていることであろう。
峰つづき おほふむら雲 ふく風の はやくはらへと ただいのるなり- 昭和天皇御製
海に陸に連戰連勝のこの時期、<おほふむら雲>とは、敗戰・苦戰の暗雲ではない。これはあまりにも、勝利の喜びか感じ取れない御歌である。さうなのだ。昭和天皇陛下にとつては、戰争とは、勝利であらうと敗北であらうと、凱歌をあげるのが味方であらうと敵であらうとあまり關係がない、戰争それ自體が、ただ一途に天風を持つて吹き拂らはるべき暗雲なのだつた。そして、その戰雲は、もはや天皇陛下の御軫念ではどうにもならない長く遠い峰つづきに覆ひ被さつてゐる。御稜威(みいつ)の力をもつてしてもそれを追ひ拂ふことはできない。天皇陛下としてもただ「祈る」ことができるばかりである。……。この御製は、陛下ご自身の無力さへのお嘆きがこめられた、ある意味悲痛な御製である。
昭和八年、今上陛下の御誕生を奉祝して企畫された「國史繪畫」78點を一册にまとめたもの。
[目次] ハインリヒ・フォン・クライスト「ロカルノの女乞食」(種村季弘訳)/E・T・A・ホフマン「廃屋」(池内紀訳)/ルートヴィッヒ・ティーク「金髪のエックベルト」(前川道介訳)/エスティーヌス・ケルナー「オルラッハの娘」(佐藤恵三訳)/ヴィルヘルム・ハウフ「幽霊船の話」(種村季弘訳)/ヨーハン・ペーター・ヘーベル「奇妙な幽霊物語」(種村季弘訳)/フーゴー・フォン・ホーフマンスタール「騎士バッソンピエールの奇妙な冒険」(小堀桂一郎訳)/グスタフ・マイリンク「こおろぎ遊び」(種村季弘訳)/ハンス・ハインツ・エーヴェルス「カディスのカーニヴァル」(石川實訳)/カール・ハンス・シュトローブル「死の舞踏」(前川道介訳)/アルブレヒト・シェッファー「ハーシェルと幽霊」(石川實訳)/ハンス・へニー・ヤーン「庭男」(種村季弘訳)/オスカル・パニッツァ「三位一体亭」(種村季弘訳)/マリー・ルイーゼ・カシュニッツ「怪談」(前川道介訳)/ヘルベルト・マイヤー「ものいう髑髏」(池田香世子訳)/フランツ・ホーラー「写真」(土合文夫訳)/超自然の露出(編者あとがきにかえて)(種村季弘)/初出一覧
「世界史を見る視點としては、これが最も正しい」と明星大學教授 小堀桂一郎氏絶賛!
國際社會の現在の構圖を作り出した淵源として十五世紀末葉にまで遡り、爾來五百年の間に白人は世界に向かつて何をして來たのかと問ひつめなくては、現代史の眞相は明らかにならない。清水馨八郎氏は、本書を以て、遂にその眞相究明を成し遂げた。世界史を見る視點としては、これが最も正しいのである。