「新字新仮名」を「正字正假名」に変換します。
私はさいきん魯迅の作品論を書くために讀み返したので、いま連想したのだが、日本の他の作家においてでなく、まさに深澤氏の『楢山節考』において、その連想の適切なことを思うのである。阿Qは魯迅が創り出した人物であるが、それは特定の個人に與えられた名ではなく、彼が中國の國民性に思いをこらした結晶として創り出された、典型的な人物なのだ。阿Qは中國のどこにでも居り、魯迅自身の中にもいるはずである。だがそれは、魯迅が終生の目標とした、中國の國民性の改造の、その可能性をも含むところの人物である。それは愚昧な民衆の一人に違いないが、魯迅はその中にすら、革命にも反革命にも轉化しうるところの一つの因子を認めた。つまり、その可能性のゆえに阿Qに絶望しなかつたのである。國民と言い、歴史と言い、阿Qと言い、彼にとつて別の名前ではないような地點で、その人物像は創り出されているのだ。
日本の小説では、小説的な美がいつのまにか美談にすりかえられていることが多い。等々、多くの興味深い指摘をしてゐる。『古典と現代文學』とともに『現代文學覺え書』は山本氏の初期の代表作で、T.S.エリオットからの直接の影響を受け、その理論を日本の藝術に適用して、山本氏は樣々な指摘を行つてゐる。山本氏は現代の俳句の世界に大きな影響を與へてゐるが、その思想の根柢にT.S.エリオットやT.E.ヒュームの發想がある事は記憶されてゐて良い。
2012年2月4日(土)スタート
2012年2月22日(水)スタート
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