山本(健吉) 私は、「正書法について」といふ文書を國語審議會が昭和三十一年に發表してをりますが、それを讀んでも、正書法についてはつきりした意見といふものを審議會は持つてないといふことを感じたのです。もう一つ、私、時枝さんが編纂の責任者になつてをられる「國語學辭典」で「正書法」の項目を調べてみたんです。それには柴田武さんがお書きになつてゐる。それに「語の正しい書き方、又は一言語を書き表はす正しい書き方の體系」と言はれてゐる。ここまではいいと思ふのです。しかしそこで、「正しい」といふことは「社會的に規範として認められてゐる」といふ意味である、といふことを言はれてゐるのです。さうすると、たとへば土岐さんなんかの審議會が正書法といふのを考へられた場合に「社會的に規範として認められてゐる」といへば、その前に當用漢字と「現代かなづかい」といふのが一應既成事質として社會的に行はれてゐる。その前提の合理化に役立つわけですね。
しかし、私は、現在社會的に規範として認められてゐるといふことだけが「正」といふことの意味ぢやないと思ふのです。これは時枝さんの「國語間題と國語教育」といふ書物を今度拜見して、一層私はその考へを固めたのですけれども、結局やはり「正」といふことは、一國の言語といふものの内的な法則、さういふものから見て合理的である、理法にかなつてゐるといふことでなければならない。これは社會的に行はれてゐるかどうかといふことの前に、そのことが當然「正しい」といふことの意味であるべきだと思ふのです。そのことの認識があの審議會には「正書法について」といふものを讀んでみてもないので、これは全然表音主義を若干「正書法」とか「語意識」とか「語構成」といふやうな考へで辯明可能なやうにする。 「はへを」の問題とかその他いろいろな、表音一點張りでいつてないといふところを合理化するといふ意味にだけ「正書法」といふ言葉を使つてゐるわけですね。
斷定的に言ふと、正書法(オーソグラフィー)と表音主義とは對立的概念だ。アランが表音主義は、詩や雄辯や會話の時代に、正書法は散文の時代に對應すると言つてゐるのも、その意味です。もちろん正書法といふのは、英語にしろフランス語にしろ日本語にしろ、表音といふことと決して無關係ぢやないと思ふのです。けれども、それは發音記號ぢやないのですからね。表音主義は徹底すれば發音記號になるわけでせう。發音記號ぢやなくて、むしろ日本語なら日本語の根本の法則、根本の原理といひますか、あるいは本質といひますか、さういふものからくる言葉の發音のズレといふものが當然なくちやならない。そこに正書法といふ考へが初めて生れるので、私は表音主義といふのは、どこの國語でもさうだと思ひますが、日本では萬葉時代の表記法といふのは大體表音主義だつたと思ふ。あるいは外國語でも、英語でもフランス語でも、最初は表音的だつたのぢやないかと思ふのですけれども、それが時代とともに變つてきて、そこに正書法といふ考へ方が出てきたので、表音主義よりも正書法といふ考へ方は語意識が進んでゐるんだ、かう思ふのです。
大野(晋) 私はかういふ案を案として出して實施しようといふ場合には、やはり案を全部公表して一年なり二年なり、それこそみんなの目にさらして、みんなの意見を聞いてやるくらゐのことをしたらいいと思ふのです。あれはほんたうに國語課とか國語審議會の一部でごたごたやつて審議會を通つた答申で、すーつと通つちやつたのですよ。そのやり方は問題だと思ふ。それは、われわれ國語學專攻といふことになつてゐても、一々のことをすぐさま、それはどうだとか、さつと思ひ浮べられないといふことですね。といふのも、さういふことばかり研究してゐないものだから、といふ問題もあるのですけれども。しかし、とにかく今、審議會のいろいろな依頼を受けた調査機關が十分な研究の實りを持つてないといふこと、これは私はやはり大きな問題だと思ふのです。
それで、この際いふのはをかしいかもしれないけれども、アメリカが日本でローマ字一本にしようとしたときには、ちやんと全國に人口の縮圖を作つて、サンプリングをしてその問題を實施して、そして點數を調べてみて、案外點數があつたものだから、もう日本をローマ字にする必要なしといつて、それでローマ字化のことはやめちやつたわけですね。かういふことなんかは、いかに彼等が社會科學をちやんと使つてゐるかを示してゐると思ふのです。日本の審議會とか國語課は學間をもつと正しく重んじて行くべきだと思ひます。
GR DIGITAL IV 発表しました!
[リリース情報]「ハイブリッドAFシステム」「GR ENGINE IV」を搭載し速写性と画質を高めたデジタルカメラ「GR DIGITAL IV」を新発売
当たり前に存在するよくわからないものを、確かめるためには一度とってしまうのがてっとりばやいです。
とったときに感じる違和感から、それが一体何か?のヒントが生まれることがあります。と提案してゐる。
Thinkpad X201sが壊れた。
PCの修理見積りの電話が来た。87000円。おい。
「X201s 修理」で調べると結構出てくる。 ただでも高級機で買う人は多いとは思えない機種で、 しかもブログをやっている人に限定されていてもこの数だ。 壊れすぎじゃないか。しかもたいていはシステムボード交換。 この機種、何か無理してないか。