読書日記

思ひ立つたが吉日とはいへ、13日の金曜日からはじめたのは少し後悔してゐる。

1998年11月13日

『山の人生』(柳田國男著・昭和22年5月15日発行・実業之日本社)を読んだ。

谷沢永一によると、筑摩の柳田國男集は(文庫も含め)編集がひどいらしい。

手持ちの『山の人生』は柳田國男先生著作集版の第一册。同著作集の第五冊『木思石語』には既刊と近刊の一覧が載つてゐるが、「代表作をまとめ」云々と言つてゐるにもかかはらずマイナーなものばかりである。

以下続刊

これらは誤植が少なく、版面も読みやすい善い本たちである。どこまで出たのだらうか。

どうでもいいのだが、この数日、『かりあげクン』(植田まさし著・双葉社)を第1巻から順に読み返してゐる。今日20巻までいつた。植田まさしの四こま漫画ではこれがいちばん面白い。

植田まさしといへば読売新聞連載の『コボちゃん』が有名で橋本治が『サザエさん』と比較してゐるが、『かりあげクン』は『いぢわるばあさん』に比較すべきものか。

柳田國男を読んでゐるせいか、『かりあげクン』が現代版吉右衛門(キッチョン)話あるいは彦七話に見えてならない。昔話が失はれた現在でも、「小さな利得を志して居るのみならず、一方には又普通人も笑ふやうな魯鈍な誤りをして得々として居る」(『笑の本願』)主人公が漫画の中に生きてゐることの不思議に人が気づかないのは不思議である。

1998年11月14日

本日はお店を回る。

天神堂書店(古書店・神奈川県相模原市東橋本2-35)……収穫なし。

啓文堂書店橋本店(相模原市橋本8-9)……川島令三の鉄道の本と、「本の雑誌」12月号を立読み。「本の雑誌」の坪内祐三の連載は面白い。購入はせず。

『かりあげクン』22巻まで進む。

1998年11月15日

WX-3の辞書メンテで一日明け暮れる。それにしてもWX-3のマニュアルはできが悪い。辞書ツールの使い方と品詞の説明がリンクしていないのだ。WXGはよくなつてゐるだらうか。

1998年11月16日

昨日の続きでWX-3の世話。なんか無為に日々を送つてゐる。

『かりあげクン』23巻を再読。

植田まさしは『かりあげクン』の後半、同じアイデアをたびたび繰返し使つてゐる。一度描いた内容は忘れてしまふのだらうか。

1998年11月17日

昨日までの反動からか、やたら散財する。

中村書店本店(相模原市横山6-8-21)……相模原市北部・中央地区で数少ない「月刊日本」誌を置いてゐる店だが、私が毎月買つてゐるので(?)少ないながらちゃんと入荷。安心した。今月(12月号)も購入。今月号は特集取り戻せ! 誇りと勇気 日本よ、どこへ行くだが、毎月同じやうな特集なので区別がつかない。「This is 読売」12月号はどこへ行く漢字といふ特集を組んでゐる。購入。

ブックセンターいとう星が丘店(リサイクル古書店・相模原市星が丘4-17-17)……先日、2階一般古書・文庫・新書コーナの模様替へを行なつた。特に文芸書・文学全集の棚が増えてゐる。が、どうせたいしたものは出てゐないだらうとたかをくくつて適当に見てゐたら、壽岳文章訳『神曲』全3巻が出てゐた。([地獄篇](昭和62年6月24日新装第一刷)[煉獄篇](昭和62年9月18日新装第一刷)[天国篇](昭和62年11月20日新装第一刷)すべて集英社)とりあへず第一歌を読んだが、読むものの心を昂揚せしめる名訳である。購入したことを書くのを忘れてゐた。←馬鹿 1998.11.30

実は、『神曲』の邦訳を4種類持つてゐる。ひとつはいま述べた壽岳訳だが、そのほかを列挙する。

岩波文庫の訳本を持つてゐないのは、どうせ読むに価せぬ悪訳に決まつてゐるからである。

おなじくいとうで『ミュートスノート戦記 戦士の掟は炎で刻め』(麻生俊平著・平成10年5月25日初版発行・富士見書房・富士見ファンタジア文庫516)と『セキホクジャーナル3』(小坂理絵著・1997年5月2日第1刷発行・講談社・KCるんるん30)を購入。

小坂女史の漫画は、少女の顔がかわいらしいのと男性キャラクタがみんな狂つてゐるところが吾妻ひでおのそれに似てゐる。ちなみに本書の登場人物に新聞部長安原玄といふのがでてくるが、どこぞの有名編集者の名前を引用したらしい。なぜか同じKCるんるんから出てゐる『くせになりそう』(なかの弥生著)も作家や芸能人の名前をちよつと変へて使つてゐる。

重い荷物を抱へて(本屋に行く前にビデオテープ×3本買つてゐる)、BOOK OFF16号相模原中央店(相模原市相模原6-7-14)へ行く。ここでは『ドラゴンズ・ウィル』(榊一郎著・平成10年1月25日初版発行・富士見書房・富士見ファンタジア文庫496)と『カレイドスコープの少女』(内藤渉著・平成10年5月25日初版発行・富士見書房・富士見ファンタジア文庫516)を購入。ともに第9回ファンタジア小説大賞の応募作(前者が準入選、後者が佳作)。

ついでにBOOK OFF相模原駅前店(相模原市相模原3-2-4)も見る。ここで『ポート・タウン・ブルース』(麻生俊平著・平成3年3月20日初版発行・富士見書房・富士見ファンタジア文庫89)を購入。第2回ファンタジア小説大賞準入選作。

私は新人のライトノヴェルを集める(もとひ――読む)のが大好きである。メディアワークスの電撃ゲーム小説大賞、富士見のファンタジア大賞、朝日ソノラマのソノラマ文庫大賞の出身作家はとりあへずチェックすることにしてゐる。SFもPCも、新しいものをチェックするのが楽しいことにはかはりがない。

1998年11月18日

『カレイドスコープの少女』を読む。最初は少し謎めいた話とキャラクターで期待したが、結局水準作。

啓文堂書店橋本駅店(京王線橋本駅コンコース内)で「増刊別册フレンド」の表紙に真柴ひろみの名を発見する。健筆のやうで安心する。早く単行本が出ないか、楽しみだ。

丸善ブックメイツ新宿店(?)で立読み。書店の裏事情に関する本だが書名は忘れた。雑誌の別册付録は書店員が放り込んで紐でくくるとか、書店は薄利多売なので万引されると儲けがなくなるとか、閉店後行う店舖のリニューアルには取次の社員が時間外労働で手伝ひにくるとか、一般的な話題ばかり。

ちなみに私はソフトウェア販売関係の会社に以前ゐたが、パソコンショップの棚卸の手伝ひをさせられたことがある。この時はソフトメーカの営業が100人ほど参加した。別の店に、新規開店のため、商品の納品と手伝ひに行つたこともある。この時はソフトウェア流通会社とメーカの営業が数人来た。価格シールを貼らされたのだが、売価をメーカの人間に決めさせるなよ。

1998年11月19日

丸善ブックメイツ相模原NOW店(相模原駅ビルNOW内)と啓文堂書店相模原店(相模原駅ビルIts内)を「巡回」。立読みのみ。

「鉄道ジャーナル」11月号で、鍋倉紀子さんが体調を崩して退社――との記事を見つける。いい文章を書く人だと最近注目してゐたのだが。

1998年11月20日

『ドラゴンズ・ウィル』を購入済みだつたことに気づく。よくあることだ。 :-P

『かりあげクン』25巻まで進む。

呉智英氏の本を片つ端から調べたが「広辞苑」序文が正かなづかひでも「現代かなづかい」でも同じ表記になることを指摘した文章を見つけられなかつた。確かに呉さんの本で読んだと記憶してゐるのだが。

1998年11月21日

丸善ブックメイツ新宿店……この間立読みした本の題名を確認する、つもりだつたが、結局うろ覚え――たしか『ただいまその本は品切です』(ミオシン出版)だつたと思ふのだが自信がない。もう一度確かめに行くつもり。

啓文堂橋本駅店……「鉄道ファン」「鉄道ジャーナル」「鉄道ピクトリアル」「RailMagazine」12月号を立読み。この4誌は毎月立読みですませてゐる。

鉄道ファンといふものは、新しく登場した列車や技術を歓迎する一方で、消えゆく列車や伝統を惜しむ心を持つてゐるのがよい。何がなんでも古いものだけが良いやうに言ふ守旧派や、変化する世の中を安易に受入れとにかく新しければ良いやうに言ふ革新主義者らは、鉄道ファンのバランス感覚を学ぶべきであらう。少なくとも鉄道ファンには、鉄道といふものを愛する心がある。

1998年11月22日

「PHOENIX WMC40周年記念特別号」(ワセダミステリクラブOB会)を再読。何もかもみな懐かしい。

『かりあげクン』29巻まで読了。後半弛れてきてゐたこの漫画も、なぜか27巻以降急に面白くなるから不思議。

1998年11月23日

『ザンヤルマの剣士 フェニックスの微笑』(麻生俊平著・平成7年2月25日初版発行・富士見書房・富士見ファンタジア文庫311)を読む。「多重人格」もの。前作『ザンヤルマの剣士 オーキスの救世主』が「洗脳セミナー」ものだつたのと同様、テーマ性が明快――といふより、参考資料によりかかつてゐる面がある。もつとも、そのせゐか、達者な割に思想面で変なところがあつたシリーズ第1巻『ザンヤルマの剣士』よりまともになつてきてゐるのだから悪いともいへない。

1998年11月24日

丸善ブックメイツ新宿エステック店……例の本は、再度確認したところ、正解は『この本ただ今品切』だつた――と思ふ。またも記憶がいいかげん。(ちなみに店名はこれが正解)ここでは「WinGraphic」(編集・発行エムディエヌコーポレーション/発売インプレス販売)を購入――表紙がlain(「serial experiments lain」)だつたので。立読みしたのは「世界」(岩波書店)――『戦争論』(小林よしのり著)に関する誹謗記事が掲載されてゐる。「小林氏は読者の感情に訴へてゐる」と言ひながら感情的に非難してゐる者、軍国主義の復活だと叫ぶ者など、あまりにもステロタイプの左翼的な批判が揃つた。日本国では論理といふものは通用しないらしく、右も左も感情に訴へかけるものばかりなのは情けない話である。

1998年11月25日

丸善ブックメイツ相模原店……「SAPIO」12/9号と『scenario experiments lain series』(小中千昭著・1998年12月5日初版第1刷発行・ソニー・マガジンズ)を購入。『lain』は今年もつとも興味深いアニメーションだが、そのシナリオ集である。絵コンテ以前のオリジナル版シナリオに、小中氏自身のコメントが付いてゐる。『lain』に関しては「メディアミックスは可能か?」内で、特に採上げた。過去に類のない「アニメーションである必然性がある」アニメーションである。設定資料集、絵コンテ集などの出版も望みたい。

啓文堂相模原店……「SFマガジン」1月号(早川書房)立読み。ジュニア小説系SF・ファンタジーの紹介ページが今後減りさうな雰囲気。「OS/2 WORLD」1999年1月号(アイ・ディ・ジーコミュニケーションズ)を購入。「OS/2 MAGAZINE」が休刊になると、TEAM OS/2の人間にとつて最後の頼みの綱ともならう雑誌なのだが、「/2 MAG」に比べるとレヴェルが低い。近所にマンションができるといふので(雑誌上で)大騒ぎするやうな人間が連載をやつてゐる。

ちなみに「OS/2 MAGAZINE」No.26(ソフトバンク)には私が歴史的仮名遣で投稿した文章が載つてゐる。あんな文章が載るのだから、投稿がめつきり減つてゐるのに違ひない。

1998年11月26日

この日の記憶が欠落してゐる。何をしてゐたんだらう。

1998年11月27日

『ザンヤルマの剣士 フェアリースノウの狩人』(麻生俊平著・平成7年6月25日初版発行・富士見書房・富士見ファンタジア文庫331)を読む。

T-ZONEミナミ(東京都千代田区外神田4-3)……『serial experiments lain公式ガイド』(電撃プレイステーション編集部編・1998年12月15日初版発行・メディアワークス発行・主婦の友社発売)を購入。この手の本は薄つぺらい割に高いです。

呑み会の後終電に乗り損ね、非道い目に遭ふ。忘年会シーズン、気をつけませう

1998年11月28日

始発電車の中で『serial experiments lain公式ガイド』と『scenario experiments lain the series』を読む。「lain」は「エヴァンゲリオン」より面白いTVアニメーションだが、ゲームはどうもつまらなさうである。シナリオ集は、小中千昭氏が本当にこの作品を愛してゐることが伝はつてくる。誤植がいくつかあるのが玉に瑕。

テレビ東京系アニメーション「聖ルミナス女学院」11月16日放映時、次回予告の前に入つたゲーム版「lain」のCMは、観てゐた「ルミナス」の印象が吹つ飛ぶほど強烈だつた。それにしてもゲーム版はあのシステムではデバッグが大変だつたらうと、デバッグのバイトの人に同情する――プレイステーションを持つてゐない人は、YAHOO!などの検索エンジンで「lain」と打ち込んで我慢しませう ^ ^ 。

さて、

呉智英氏の本を片つ端から調べたが「広辞苑」序文が正かなづかひでも「現代かなづかい」でも同じ表記になることを指摘した文章を見つけられなかつた。確かに呉さんの本で読んだと記憶してゐるのだが。(11月20日)

に関して、『読書家の新技術』に載ってゐるといふ情報をいただいた。羽織ゴロ助様、ありがたうございます。国語問題のページも手直しました。

1998年11月29日

財布をなくしたので、本屋に行けません。WX-3の世話をしたり、コネクトワイアードしたりしました。PCのまへに座りこんで、時々独り言を言つてゐる――玲音になった気分を味はつた一日。それはともかく、某掲示板で羽織ゴロ助様にお礼をいふのを忘れてしまひました。3件連続で投稿するのもはばかられましたので、ここで改めてお礼とお詫びを申し上げます。

1998年11月30日

神保町の中野書店さんから古書目録「古本倶楽部」90号と「中野書店古書目録」64号 筆蹟特輯が届く。見てゐる分にはいい資料なのだが、買はうとすると値段が高めなので手が出ない――通信販売だからしかたがないのでせうが。

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