初出
「奇魂掲示板」
公開
2003-05-25

「反米の旗手?まさか!仏・独・露の無責任」

保守系論壇誌「諸君!」(2003年6月號)で、同志社大学助教授村田晃嗣氏が「反米の旗手?まさか!仏・独・露の無責任」と云ふエッセイを書いてゐます。


村田氏は、

と指摘し、國聯による査察は效を奏してゐなかつた、と評します。

また、フセイン大統領が國聯査察に協力的になつたのは、米軍が中東に大規模に展開したからである事を、村田氏は指摘してゐます。

これに對し、フランスが査察期間延長を主張したのはただの意地でしかない事、フランスやロシアが國聯による經濟制裁の方針に反してイラクから石油を輸入し續けた事、米軍が中東に駐留する費用を佛・獨・露が分擔しなかつた事を、村田氏は批判してゐます。

村田氏は、國聯安保理決議1441に贊成してゐた佛・獨・露が、どのやうな形でこの決議を實現しようとしてゐたのか、と疑問を呈します。アメリカの態度が強引であつた事は、村田氏も認めます。しかし、佛・獨・露の態度は、反対の爲の反対であり、ただ無責任でしかなかつたと村田氏は述べます。

そして、村田氏はかう書いてゐます。

一部には、ブッシュ大統領は父親が湾岸戦争でやり残した問題を解決したいだけなのだとか、アメリカが開戦を急ぐのは石油利権が目当てだからだという類の、安手の陰謀論がささやかれている。「バカで好戦的な指導者」というブッシュ像もかなり流布しているように思われる。だが、ボブ・ウッドワードの近著『ブッシュの戦争』を一読してもわかるように、ブッシュ大統領をはじめとするアメリカ政府の首脳たちは、同時多発テロという未曾有の国難以来、悩み苦しみ怯えながらも、限られた時間と情報、選択肢の中で、重大な決断を重ねてきたのである。

村田氏は、戰爭で米軍が壓勝しないとも限らないし、さうならないかも知れない、やってみなければどうなるか、正確には予測しつくせない父親の意趣返しや石油利権、軍需産業の利益のためだけに始められるほど、戦争は単純なものではない、と述べてゐます。

かつての灣岸戰爭が始まる前は、武力行使に反對し、經濟制裁の延長を支持する聲が多かつたが、多國籍軍がクウェートを解放すると、その聲は小さくなつた、世論とは、かくも移り気なものである、今囘のイラク戰爭でも、戦争が、再び米英などによる短期圧勝に終わり、バグダッドがフセイン体制からの解放の歓喜にあふれ、その後に、大量破壊兵器の隱蔽が明るみに出るようなことになれば、反戦・反米感情はみるみる退潮するであろう。もちろん、さうならない事もあり得る。が、とにかく今囘のイラク戰爭は、アメリカにとつてもリスクの高い賭けである。


村田氏は、はつきり書いてゐませんが、アメリカの首腦部――そしてブッシュ大統領――が大變な苦惱を乘越えた上で決斷してゐる事を評價してゐます。村田氏の意見に私も贊成です。私もブッシュ大統領の決斷は、評價せざるを得ません。

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