スポーツに熱狂する人々

人が皆同じ方向に歩いて行くところで、一人だけさめた顔をしてゐるのは、嫌がられるけれども、必要な事もある。

• サッカーにしても大騷ぎにしても、あんまり日本人的でないので個人的には興味がない。
• 「日本人的な大人の態度」を推奬する人が、「ラテン的な熱狂的な態度」を擁護するのは、よくわからない。多分「典型的な現代の日本人」なのだと思ふ。
• よくよく考へると、たかがスポーツ、だぜ。サッカーにしても相撲にしても。
• 政治にしても經濟にしても、ちよつと熱くなり過ぎる人が多い氣がする。
• スポーツ觀戰や政治談義や經濟の話題で熱く熱くなる人が、倫理とか道徳とか文學とか言はれると物凄くさめた表情になつて、呆れた樣な顔をして、人を小馬鹿にした樣な事を言始める。
• 俺なんかにしてみれば、政治だの何だのの「床屋談義」を一生懸命やつてゐる勘違ひ野郎に、冷水を浴びせる事の方が大事だと思はれるんだよ。
• 大體、サッカーでも政治でも、俺達は「はたで見てゐる一般人」なんだよ。飽くまで他人事だ。しかし、道徳問題や文學の問題で、俺達は常に當事者だ。何うして當事者が他人事のやうな顔をしてゐて良いだらう。その邊勘違ひしてゐる人が多過ぎる。
• サッカー選手や政治家は、そりや一生懸命やつてゐる。が、觀客も一般の國民も選手當人・政治家當人ではない。飽くまで他人事だ。觀客も國民も、氣樂に彼等の話をしてゐる。選手や政治家がミスを犯せば平氣で野次を飛ばすが、責任を自覺して非難してゐる人は一人もゐない。責任なんてないのだから。