公開
2001-11-01

私の英國史

「空しき王冠」(ジョン・バートン編・福田逸譯)の「解説」として書かれたイギリスの歴史。

イギリスの歴史は、日本でも多數刊行されてゐる。本書は特に「王朝史」として書かれたもので、立憲王制による民主制が實現する直前までをとりあげる。

イギリスで民主主義や社會主義が生れた背景を理解し、納得する爲には、民主主義以前の状況を知る必要がある。多くの歴史書は、民主主義以前に起きた或歴史的事件が民主主義の實現にいかに役立つたか、或は、民主主義の觀點から見ていかにそれ以前の社會に問題があつたかを述べる。

本書は、さう云ふ「現代中心」の視點から離れて、現代的な視點から裁くやうな事をしないで、ただ或時代の人物に焦點を當てて、その人物の行動を記述しようとしてゐる。T.S.エリオットも言ふやうに、或時代の思想を、我々は信じようとしなくとも良いが、少くとも理解しようと努力すべきである。

福田氏の解説は飽くまで日本人の目から見た英國史である。中央公論社版の單行本には、バートンが古今の文獻から抄録し再構成した「空しき王冠」が併録されてゐる。こちらも併讀して、イギリス人が自分達の歴史をどう見てゐるか、と云ふ事を知る手がかりにしたい。

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