初出
「闇黒日記」平成十八年七月十七日
公開
2006-09-10

会田雄次『カラー版世界の歴史12ルネサンス』(河出書房)

会田雄次『カラー版世界の歴史12ルネサンス』(河出書房)讀了。「あとがき」に據れば「日本人の視點から西洋を見る」と云ふ立場からルネサンスと宗教改革を扱つてゐる。實は中村賢二郎との共著で、中村氏は新世界の發見と宗教改革の項を執筆。さう言はれれば慥かに「讀みもの」的な工夫がなされてゐるのは前半のルネサンスの項だ。

会田氏が書いたらしい前半部は、事實の羅列の域に留まらず、キリスト教社會の外部の人間の觀點からなされた批評が含まれる(もちろん偏つた内容である訣でもなく公正を期したものであり、その點、誤解無きやう)。後半、中村氏の分は、積極的な批判が含まれる前半と違つて、どちらかと言ふと「普通の歴史概説」となつてゐる。


千九百八十九年に文庫化されてゐて、そちらでは会田氏中村氏の共著とはつきり書かれてゐるやうだ。


会田氏の考へ方は、要約すれば「過去から現在までの歴史學においては西歐人の物の見方が屡々深いレヴェルにまで入り込んでゐる。けれども、それ許りが本當の歴史的な物の見方と云ふものでもない。我々日本人は、必ずしも西歐人の物の見方に從はなくても良い、寧ろ意識して西歐人とは異つた見方をする事が必要だ。それによつて西歐人流の歴史學を相對化する日本人の歴史學を構築する事が出來るだらう」と云ふものだ。

意地になつて「日本人的」な歴史學を作るべきだ、と云ふ事で無い事は言ふまでもない。飽くまで「異る文明の下に生きる人間がそれぞれ異つた見方を提供する事で、全體としてより良い歴史學を作れるのではないか」と云ふ「提案」である。

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