初出
セブンアンドワイみんなの書店「書肆言葉言葉言葉」
公開
2018-02-22

白川静『漢字百話』

「田圃で力を入れて働くから男」のやうな解釋が從來は通用してきた。しかし、今の整理された字形から意義を説明する事は本質的にナンセンスである。本書の著者・白川静氏は、甲骨文や金文を研究し、漢字の古形を調査した。氏は、漢字がもともと呪術的な目的で用ゐられ、儀禮に關聯する具體的な映像を象徴的に表現した記號である事を主張してゐる。本書は、「本來的」な漢字の解釋についての入門書である。白川氏は、通説を退けつゝ、古形を基に漢字の大系化を試みてゐる。言換へれば、漢字は、單なる音聲言語の筆寫に用ゐられる便宜的な記號である譯ではなく、それ自體が獨自の原理に基く體系的な「文字言語」である。そして、白川氏の示す體系的な文字言語としての漢字の觀念を理解するならば、戰後に行はれた國字改革が、全く誤つた理念に基いて行はれた誤つた改革であつた事を理解出來るだらう。

リンク

inserted by FC2 system