制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2011-02-26

鈴木信太郎『虚の焦點』

書誌

目次

遊戲
東京のした町
身邊の賣物
我儘孝行
起承轉結
辭典と齒痛
私の本棚
入学試験株式会社
正月風俗
教師の宝物
日付のからくり
番地と町名
旅の断片
フランス喜見城
西洋うなぎの話
口舌の思い出
幻影
仏語仏文学事始
学者と仙人
大学同級
仏文新陣容
仏文畏友
旧友面々
文人雅客
ろざりよの仲間
勇気あることば
悲しい自慢
『類推の魔』の思ひ出
授賞を祝ふ
篆刻遊戲
雪後馮闌記――谷崎さんの手紙
造寶人の話
虚像
女の年齢
一冊の本
私の本「半獣神の午後」
エディシオン・オリジナルといふ事
マラルメと日本の品々
美女解説
ヴァレリーの復讐
『ヴィヨン遺言詩集』解釋の時點
ゴルフとふらんす語
ゴルフ浪人手記
私のフランス文学

「序」(渡辺一夫)より

……。

戦後の日本語があらゆる意味で紊れ切り、その血肉が稀薄になってゆくことを慨いて居られた先生は、御自身の文章が新假名に変へられて印刷されることを嫌悪して居られた。先生は、漢字制限にも大反対であり、むつかしい語法や微妙な差異のある漢字を調べることは、人間の精神を陶冶すると主張して居られた。これは先生として当然なお考へだし、私も、これに心から贊同してゐる。

私自身は、あまり正確でない旧假名で文を綴るのに慣れてしまってゐるので、さうしてゐるが、自分の語法に自信がないから、新假名に変へられて印刷されてもいたし方ないと思ってゐる。そして、「さういふ考へがそもそも日本語の紊乱の緒口になるのだ」と、先生から度々叱られたことを記憶してゐる。

……。

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