『閉ざされた言語・日本語の世界』(鈴木孝夫著)推薦の言葉

明治以來、今日に至るまで日本語、及びその表記法は難しく非合理的で近代化や進歩の障碍になつてゐるといふ偏見、或は劣等感が支配的であるが、著者はさういふ考へ方こそ如何に非合理的であるかを指摘し、一般の日本人がどうしてこの樣な劣等感を懷くに至つたか、どうしたらそこから脱け出せるかについて、誰にも解る平易な文章で解明してゐる。言はれて見れば「コロンブスの卵」の如きもので、どんな石頭でも忽ち改宗せざるを得なくなるだらう。その明快な説得力の裏には著者專門の言語學があり、その言語學が單なる不毛な知識の堆積ではなく、日本語とは絶對に切り離せぬ日本人の物の考へ方、生き方に對する深い洞察の上に立つてゐるからだ。著者はそこから今日流行の閉鎖的な獨善的日本人論とは異つた開かれた國際的日本人論を展開しながら、日本における外國語学習の目的と方法まで論じ、日本語再確認への道を示唆してゐる。日本人なら誰しも一讀すべき得難い書物である。

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