制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2011-03-03

大川周明『日本及日本人の道』

書誌

「序」より

日本は『既に造り上げられた國』でない。國家は、一切の生命が然る如く、一貫不斷の創造的行程に在る。故に獨り日本と言はず、國家の名に負かぬ一切の國家は、皆な『恒に造られつゝある國』でなければならぬ。此の眞理は、上代支那の哲學者荀子が、既に下の一句に於て道破せる所である――『天地の始は今日是なり、百王の政は後王の政なり。』

かくて日本は、現に造られつゝある國である。而して國家は、プラトンが周匝明瞭に説示せる如く、不動の巖の上に建てられたる家になぞらふべきものに非ず、國民の魂を基礎とし、且國民の魂を以て組立てられた家である。故に日本を創造しつゝあるものは、端的に我が魂であり汝の魂である。國家の莊嚴は、實に其の基礎たり同時に材料たる魂の深刻と偉大とに比例する。頼山陽曰く『國の國たる所以は、其の士あるを以てなり。士の士たる所以は、其の氣あるを以てなり。士は氣ありて而して後、以て自立するものあり。擧國の士、以て自立するあれば則ち國立つ。擧國の士、以て自立するなくば則ち國仆る。

……。

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