バーチャルネット古本オタク櫻花23.4歳
2004年6月29日のお話
承前。
櫻花の勤める(住込み)某文学館。玄関。
櫻花、腕組みして外を睨んでいる。蜜子、ポケットに手をつっこんで、櫻花を眺めている。
- 櫻花さん
- ……遅い。
- 蜜子さん
- ……遅いね。
- 櫻花さん
- 今日の午後四時に来るって言うから。
- 蜜子さん
- のあさんあやのさんか。
- 櫻花さん
- 未整理の本、用意して待っているのに。
- 蜜子さん
- 自分の本、整理させる積りかい。
- 櫻花さん
- せっかくですから。
- 蜜子さん
- 悪辣な奴だな。
- 櫻花さん
- 業務の体験、って事で。
- 蜜子さん
- 業務じゃないだろ。
- 櫻花さん
- 似たようなものです。
- 蜜子さん
- たしかに、似ているけれども、さあ。公私は分けようよ。
- 櫻花さん
- ジョークですよジョーク。どこの馬の骨ともわからん奴に、わたしの蔵書はさわらせられません。
- 蜜子さん
- ……一往、あたしの事は信頼してくれているのかな。
- 櫻花さん
- いや、あんたは指示したら素直に従ってくれたんで。
- 蜜子さん
- 殺すぞ。
- 櫻花さん
- それにしても……遅い。
- 蜜子さん
- まあ、雨、降って来たし。
- 櫻花さん
- 雨が降ろうが風が吹こうが、約束は約束。
- 蜜子さん
- それはそうだが。雷、鳴ってるよ。
- 櫻花さん
- 雷が鳴ろうが、わたしだったら古本屋に行くと言ったら行くね。
- 蜜子さん
- ……いや、それはあんたの趣味だろうが。
- 櫻花さん
- ……ああ、来たようね。
- 蜜子さん
- ……耳が良いな。
のあとあやの、登場。一方、いったん櫻花、退場。
- のあ
- どうして急に雨、降ってくるんだよう。ひどいよ。
- あやの
- 昨日の天気予報で、晴れ、午後ところにより夕立、って言ってたっけ。
- のあ
- なんでそういう事、早く言ってくれないの?
- あやの
- 学校で会ってから言っても、手後れだと思うけれども。
- のあ
- でも何であやの、傘持ってこなかったの。
- あやの
- ……実は、持ってる……。(小声の独白。のあには聞えない)
- のあ
- のあたんびしょびしょ。
- あやの
- ……萌える……。
櫻花、再登場。
- 櫻花さん
- はいはいいらっしゃい。ひどい雨ね、濡れたんじゃない。
- 蜜子さん
- 見事にな。
- のあ
- こんにちはー。
- あやの
- 遅くなりました、すみません。
- 蜜子さん
- まあ、お天気は仕方がないから。
- 櫻花さん
- とりあえず、濡れたの、拭いて。(バスタオルを渡す)
- のあ
- あーどうもありがとうございますっ。
- あやの
- すみませんねえ。(と言いながら、鞄からマイタオルを取出す)
- 櫻花さん
- いや、資料汚されたら困るし。(あやのの頭にバスタオルを投げつける)
- 蜜子さん
- おいおい。(苦笑)
- のあ
- ふええ、こわいよ。
- あやの
- お手柔らかに。(よしよし、とのあの頭をなぜる)
- 櫻花さん
- それじゃまあ、きれいになったら、資料室へどうぞ。
- あやの
- では、おじゃまします。
- 櫻花さん
- 靴の泥、きちんとおとしてね。(にっこり)
- のあ
- ふええ。
- あやの
- よしよし。
- 蜜子さん
- 子供おどして泣かすなよ櫻花。
- 櫻花さん
- おどしてる積りはないんですが……あーだから水滴飛ばすなって。
- のあ
- ふえええ。
- あやの
- すみませんすみません。
- 櫻花さん
- あ、いやいや、怖がらせたいわけじゃなくて。資料、汚さないでね。一往、貴重品だから。
- 蜜子さん
- 一往、って何だ。
- 櫻花さん
- だって、仕事だからさ、確かに貴重は貴重なんだけど。わたしの蔵書に比べたら、ねえ。
- 蜜子さん
- ……。
話が終わらない。次回に続く。
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