バーチャルネット古本オタク櫻花23.4歳
2003年11月1日のお話
櫻花さんは、某所の文学館に住み込みで働いています。そういう設定なのだから仕方がない。
- 蜜子さん
- こんにちはー。おじゃましまーす。
- 櫻花さん
- ……あらいらっしゃい。
- 蜜子さん
- どうもどうも。
- 櫻花さん
- …………なんかいつもと違って、妙に常識人っぽいせりふによる導入部ですね。
- 蜜子さん
- たまには良いのではないですか。どうせすぐ、いつものアレな会話になるんでしょうし。
- 櫻花さん
- ……まあ、何を喋ろうと、あんたの自由ですから。
- 蜜子さん
- ……それはともかく。櫻花さん、今日はお仕事ですか。
- 櫻花さん
- しばらくさぼっているうちに、資料がたまってしまってねー。この週末に方附けてしまおうかと。
- 蜜子さん
- 怠け者の節句働きですね。
- 櫻花さん
- 11月3日は文化の日。今日から三日間は、文化の日を含む三連休。この時に、文学関係の資料というはなはだ文化的なるものをばまとめて整理しようとたくらんでいる私の行動、これの何が問題ですか。
- 蜜子さん
- 問題って……たくらむって言い方もアレですし……。
- 櫻花さん
- 深謀遠慮と言い換えてもよろしい。
- 蜜子さん
- …………まあ、いつ仕事をしようと、あんたの自由ですから。(棒読み)
- 櫻花さん
- ……と言うか、仕事の邪魔しに来るなよ。
- 蜜子さん
- んー。だって、あんたが今日、仕事をしているなんて、思わなかったんでね。今日、神田古本まつりやっているんだよ。
- 櫻花さん
- 知ってる。知ってるから、行かない。
- 蜜子さん
- ?
- 櫻花さん
- こんな日に神保町に行くなんて、素人です。
- 蜜子さん
- ……そうなんですか?
- 櫻花さん
- 考えてもみて下さい。まつりですよ。人出で賑わうのですよ。そんな状況下において、落着いて古本の選別作業ができますか? できません。古本屋だって、地方からこの日だけ出てくるおのぼりさんの無知につけこんで、ぼったくり価格を平気で附けてきます。神田古本まつりで古本を買うのは馬鹿です。馬鹿と言って波風が立つと言うので、さきほどは素人と申し上げました。
- 蜜子さん
- でも、今はっきり馬鹿って言っちゃってるじゃん。
- 櫻花さん
- (聞いてない)だからこそ、あえてわたくしは、今日この日、わが生活の場にして勤務先である○○○○文学館において、資料整理を行なっているのであります。これほど論理的な行動がほかにあるでせうか、いや、ない(反語)。
- 蜜子さん
- ……それはいいけれどさ。
- 櫻花さん
- ん?
- 蜜子さん
- あたしにはあんたが今やってること、仕事に見えないんだよね。
- 櫻花さん
- なんですって?
- 蜜子さん
- いつもあんた、趣味で本棚、いじくりまわしてるじゃん。
- 櫻花さん
- ……ま、反論できませんけど……。
- 蜜子さん
- とりあえず、神保町でもいいから、どこかに遊びに行こうって誘いに来たんだけど、仕事中ならいいです。諦めます。
- 櫻花さん
- ……ちょっと待て。
- 蜜子さん
- 何?
- 櫻花さん
- 行く。
- 蜜子さん
- 行く? どこ行く?
- 櫻花さん
- ……神保町。
- 蜜子さん
- 神保町? 今日行くやつは素人だって……。
- 櫻花さん
- だって仕方ないだろ。素人のあんたが誘いに来ちゃったんだから。誘われたら行くしかないじゃないか。何しろ神保町だし。
- 蜜子さん
- ……。
- 櫻花さん
- 私は誰の挑戦でも受ける。
- 蜜子さん
- 挑戦してない、してない……。
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