バーチャルネット古本オタク櫻花23.4歳

2002年11月27日のお話

ある日の古本市にて。

黒櫻花さん
! 隠れて! 黒蜜子さん!
黒蜜子さん
何ですか、黒櫻花さん?
黒櫻花さん
奴らよ、ほら、あそこ!
黒蜜子さん
櫻花と蜜子ですね。奴ら、こんなところに、何しに?
黒櫻花さん
決ってるでしょ、古本市やってるから来たのに。あなたの目は節穴ですか、黒蜜子さん。
黒蜜子さん
……でも、ほかの可能性はないんでしょうか?
黒櫻花さん
ない! わたしは櫻花のダークサイドです。彼女の行動パターンは、完璧に読めます。
黒蜜子さん
ダークサイドなのですか?
黒櫻花さん
その通り。櫻花がごはん派なのに対してわたしはパン派、緑茶党なのに対して紅茶党、蜜子を連れているのに対して黒蜜子さんを連れている。以下略。わたしは彼女のダークサイドなのです。
黒蜜子さん
それのどこがダークサイドなのですか?
黒櫻花さん
(きいてない)櫻花め、本を手に取ったわ!
黒蜜子さん
何でしょうか?
黒櫻花さん
あ……あれは! あれは、わたしの探していた土居晩翠訳『オデュッセーア』!
黒蜜子さん
やられましたね。
黒櫻花さん
あ、戻した。

櫻花さん
高いわね。わたしはこの半額で買いました。
蜜子さん
いちいちもう買ってある本の値段をチェックするのはやめろよ。

黒櫻花さん
……。
黒蜜子さん
彼女、持ってたんですね。
黒櫻花さん
……今度、借りに行こう。
黒蜜子さん
借りるんですか、あの女に?
黒櫻花さん
そうです、そして、返さないのです。極悪ですね。
黒蜜子さん
極悪ですけど、あの人、あなたに本を貸してくれますか。
黒櫻花さん
……無理だと思う。前に、借りて、返さなかった事があるから。
黒蜜子さん
もうやってたんですか。
黒櫻花さん
いや、無くしちゃったんだけど。彼女に怒られて、仕方がないから、買って返した。
黒蜜子さん
あなた、本当にダークサイドの人なんですか。
黒櫻花さん
以来、わたしは彼女を許せないのです。
黒蜜子さん
……そういう謂れがあったとは。というか、逆恨みかよ。
黒櫻花さん
櫻花を倒すため、わたしは日夜戦い続けるのです。
黒蜜子さん
ダークというか何というか。

黒櫻花はこのあと、『オデュッセーア』を買った。


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