蜜子さん番外地
2001年8月8日のお話
承前。
- 櫻花さん
- 蜜子さんのおかげで本棚を組立てられました。
- 蜜子さん
- まったく、自分じゃ何にもできないんだから。不器っちょ……まあいいわ、完成おめでとう。これでいいわね。もう用はないわね。それじゃね。おやすみ。
- 櫻花さん
- 逃げちゃ駄目です。これから本を並べるのです。
- 蜜子さん
- 並べなさいよ、勝手に。私は帰って寝る。
- 櫻花さん
- これからが一番楽しいところなのに。
- 蜜子さん
- 何が楽しいんだか。
- 櫻花さん
- たとえて言えば、本棚にびしっと本がつまった時の喜びは、ぷよぷよで20連鎖を決めた時のそれに似ている。
- 蜜子さん
- ……
- 櫻花さん
- ぷよぷよも知らないとか。
- 蜜子さん
- 知ってる。一応。しかし20連鎖は……。
- 櫻花さん
- わたしはやった事がないので、よく知らないのです。
- 蜜子さん
- おい。
- 櫻花さん
- それはともかく、美しく並べられた本の背中──それは本を買う苦しみを一瞬にして帳消しにする至上の悦楽!
- 蜜子さん
- 本を買うのは苦しいのかい。
- 櫻花さん
- (聞いてない)そう、わたしは本棚に並べられた本の背表紙をおかずに、ご飯を食べられちゃったりします。
- 蜜子さん
- 本の背表紙フェチ……?
- 櫻花さん
- さあ、夜も更けたし、急いでやっちゃいましょう。
- 蜜子さん
- というか、もう11時過ぎてるぜ。
- 櫻花さん
- まだ11時なのです。わたしにとってはまだ宵の口なのです。
- 蜜子さん
- ……わかった。手伝う。手伝うから、早くしろ。何でもいいから、ぱっぱとやっちまえ。ほら、そこら辺の本、適当に取って、渡せ。
- 櫻花さん
- 何を言うんですか。適当では困るんです。本を美しく並べるには、出版社別、著者順、サイズ、形態、発行年度、その他もろもろの諸条件を勘案し、最適化しなければなりません。じっくり考えながらやらなくちゃいけないのです。
- 蜜子さん
- この女は……。
- 櫻花さん
- それじゃ、この棚にはこっちの棚の創元選書を移植しましょうか。
- 蜜子さん
- 床の本の山はどうするんだよ!!!
index.html