父から聞いたまま。
小樽の港にて。
ちよつとした坂道を、荷車を曳いた馬が登れなくて、ずり下がつて、海に落ちたのださうだ。二時間經つて引揚げられた馬は、齒の間から舌を突き出して凄い形相だつたと云ふ。
能く二時間も見物してゐたものである。
花火大會があつたのださうである。
曇つてゐたので、花火が打ち上がつても、雲が赤や緑に光るだけだつたさうである。
半年も北海道を廻つた父は、こんな事ばかり覺えてゐるらしい。