昭和32年生。漫畫家。本名・鏡味晃。パステル畫風の漫畫(殊に美少女キャラ)とちよつとユーモラスなメカニックデザインで知られる。
昭和54年、「故郷を求めて」をぶ〜けに投稿。ファン活動を經て56年2月、石森プロ入社。57年「クラリスメモリー未来篇」(アニメック)でデビュー。57年12月、石森プロ退社。麻布十番のマンションに引越。58年、出渕裕氏との親交もあつて、アニメ『超時空要塞マクロス』にアイデア提供。その頃から雜誌に漫畫を本格的に發表しはじめる。59年2月、高田馬場に引越。漫畫連載は人氣を集めたが、その爲多忙を極める事となつた。7月中旬より風邪をひき、「體がだるい」と友人に漏らすやうになり、一部雜誌連載を休む。8月8日、自宅で亡くなつてゐるのを發見される。享年26歳。戒名・鏡 譽晃彩紫雲居士。
かがみあきらは、メカデザイナーとしての才能と、ストーリーテラーとしての才能を持ち、時代の波に乘る事が出來た。だが、それら二つの才能は本質的に相容れないものであつたやうに思はれる。かがみの作品を見ても、メカと美少女の融合は、必ずしも巧くは行つてゐない。アニメパロディやSF/ファンタジイコミックは、屡々ストーリー展開に無理があり、必ずしも良く出來てゐるとは言へない。
しかし「トライアングルラブソング」のやうなシリーズ作品や「レディ・キッド&べビィ・ボウイ」のやうな長篇では、(それなりに)巧みなストーリーテリングの才能を示してゐる。かがみは長篇型の作家であつたやうに思はれる。純粋な少女漫畫か、純粋なSF漫畫で、手腕は發揮されたかも知れない。
「プチ・アップルパイ8」で「トライアングルラブソング」シリーズの連載を終へ、かがみは亡くなつてゐる。「プチ・パイ8」には、次號からかがみの本格的な少女漫畫を掲載する、とある。もともとかがみは少女漫畫志向であつた(陸奥A子、一條ゆかりに影響を受け、後、松苗あけみに傾倒した)。「プチ・パイ」の「本格少女漫畫」が實現してゐれば……と思はれる。
かがみは、ヴィデオマニアとして知られたり、「赤毛のアン」は人生最大の影響作品である
と語るアニメオタクであつたり、原田知世の熱烈なファンだつたりするが、同時にリック・ウェイクマンをこよなく愛し、プログレッシヴ・ロックに造詣の深い男
ソフトマシーン Vol.1 p.93であつたさうである。
みき書房のソフトマシーン編集者が「リック・ウェイクマン物語」を描かないかと持掛けると喜んで乘り氣になつた、との事である。もつとも、かがみが生きてゐたとして、それが本當に實現したかどうかはわからない。