公開
2001-06-07

富野由悠季監督について

最近、富野由悠季監督が憎めなくなつてきた。クリエータ本人の言葉が一番當てにならないものではあるのだが、富野氏が、ユーモアっていふものをどういふ風に日本の風土に定着させていかうかといふことは、僕の演出家としての課題になつてるんです、と語つてゐるのを見たせゐだ。

「皆殺しの」と云ふ形容句が必ず冠せられる富野氏が、實はコメディ志向のアニメーション作家である事は、意外な程見逃されてゐる。「重戦機エルガイム」がリニアに「機動戦士ガンダムZZ」に繋がつてゐて、間に挾まる「Z」の方が異端である、と云ふ事實は案外指摘されていない。しかし、のちの「Vガンダム」や「∀ガンダム」といつた、何とも言へない「かつたるい」作品群を見れば、「ZZ」こそ富野作品のメインストリームである事は誰の目にも明かだらう。

「逆襲のシャア」は大笑ひ出來るアニメであるが、さう云ふ評價を全く聞かない。何でも糞眞面目に捉へるアニメファンらしいと言へばらしいのだが、しかしその責任は富野氏自身にもあるやうに思はれる。「いき」を論じた九鬼周造はいきでないと山本夏彦氏は評してゐるが、ユーモア作品を作らうとしてゐる富野氏が眞劍な表情をしてゐるのは變ではないか。

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