制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2006-03-18

雜誌「思想の科学」

一九六二年四月号
思想の科学社に據る復刊号。
内容は廢棄された中公版「一九六二年一月号」と全て同じ。ただ、扉に「思想の科学」編集委員会「復刊のことば」を掲げ、目次を修正、廣告や埋め草記事を追加・變更する等し、卷末に「中央公論社版『思想の科学』天皇制特集号廃棄事件について」の纏め(市井三郎「雑誌の問題について」、斉藤真「特集発案者として」)を追加してゐる。もう一つの編集後記
「特集・天皇制」について。同誌は左翼雜誌であり(當時の思想の科学研究会会長は久野収)、殆どの掲載論文は天皇制反對の立場から書かれたもの。ただ一篇だけ例外的に「天皇制支持」の論文が掲載されてをり、それが葦津珍彦「国民統合の象徴」。

しかしただ一つ、編集委員会内で意見がなかなか一致しない問題があった。それは同特集に、天皇制を支持する立場の人の論文をも掲載するか否か、をめぐっての意見の相違であり、わたしは理性的な議論が展開されているかぎり、天皇を支持する立場との思想的交流こそがこの雑誌の性格にふさわしい、という理由で掲載することを強く主張し、委員会での数回にわたる論議の結果、その点でも意見の一致に到達することができた。

「国民統合の象徴」は、極めて理性的に書かれた論文で、客觀的な内容であり、論理的な説得力を持つてゐた。その爲、橋川文三が一九六二年八月号で大體ファナティックな独断論的なものでない思想的緊張性を欠いたものだといつた感想を述べたとの事である。これに對して葦津は「続・国民統合の象徴」で、私が「思想の科学」に執筆するときに期待しているのは、科学的成否の判定であって、感情的な好悪の評判ではないのだが――。と述べ、弁明してゐる。
一九六三年一月号
「三たび天皇制をめぐって」と題した小特集を組んでゐる。葦津珍彦が「続・国民統合の象徴」を執筆してゐる。
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