制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
初出
「闇黒日記」平成十六年一月二十五日
公開
2005-12-18
改訂
2017-06-05

『自由主義の擁護』

『自由主義の擁護』白日書院
昭和二十一年十月十五日發行
昭和二十二年四月十五日再版發行
『自由主義の擁護』角川文庫
角川文庫97

社會思想としての自由主義と、哲學としての理想主義とは、混同されてはならないが、密接な關係を持つ。自然法の哲學、功利主義の哲學ではなく、理想主義の哲學を根柢に持たなければ、現代の自由主義が成立たない。

理想主義とは、先天的(アプリオリー)の即ち經驗から導き出されたのではない能力の存在を主張することを特色とする哲學である。

國家主義では、國家が最高の價値と看做されるが、看做すのは個人である。マルクス主義では、ただ現象を分析するだけで足るとする建前を標榜し、價値や理想の存在を否定する唯物主義が主張されるが、現實の生活に於て何をとり何を捨てるかと云ふ選擇をなす時、「ない」と定義されるにもかかはらず依然として個人の價値觀に基いて選擇をしてゐる。理想主義では、個人が價値觀を持つ事を前提に、個人が自己の人格を成長させる事を人生の目的と認め、個々人の獨自の人格を認め、同時に個々人に獨自の人格を涵養する努力をなす責任を要求する。

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