公開
2010-10-31

『作家の態度』

表紙
昭和二十二年九月十五日第一刷發行
中央公論社

「あとがき」より

この書は林達夫氏の慫慂によつて成つたものである。數ヶ月まへある書店より既發表の作家論を蒐めて上梓することを薦められたのを機に、それらを讀みなほしてみたのであるが、意に滿たぬ點が多く、うやむやのうちにその話はたち消えになつてしまつた。しかしそのうち二、三は同人雜誌に發表したものであり、あまり人目に觸れてゐないものなので、この際、書き改めるものは書き改めて雜誌に載せてゆき、將來機會のあり次第、一册の書物にまとめてみたいといふ氣になつた。讀みかへしてみると、やはりこの十年ほとんどおなじことしか語つてゐないのに氣づき、單行本としても首尾一貫したものができるとおもつたのである。さらに僕は、新しく書きおろしてゆくものはもちろん、書き直しをしながらも、できうるかぎり全體を統一あるものとしてそれぞれ呼應せしめたいと考へた。その機會はおもつたより早くやつてきた。僕はこの機を利用して一日も早くまとめてしまひたいとおもひ、そのためほとんど全部が書きおろしのやうな形になつたのである。しかし、この書物が、實際に刊行されるときまでには、その半分は雜誌に掲載されることにならう。左に各篇の成立についてその事情をあきらかにし、讀むひとの便ともしたいとおもふ。

……。

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