日本の近代化はジグザグにすすむ。その宿命的なゆがみに対して本質的な懐疑をもち、反撥しようとする鋭敏な知性人の論集。
本書の解説および解説については、西尾幹二氏より多大の協力を受けた。もし氏の積極的な好意がなければ、おそらくこれを完成しえなかったであろう。ここに深くお礼を申し述べる。
すでに「解説」において指摘したように、「反近代の思想」という特定の理論体系はないので、特定の参考文献も存在しない。ここでは、解説を執筆する上で直接間接にかかわりのあった文献、あるいは念頭においていた書物を、思いつくまま列記しておきたい。
T・E・ヒューム『ヒューマニズムと芸術哲学』宝文館(原題「思索」一九五三年翻訳出版) T・S・エリオット『文化とはなにか』弘文堂(一九五一)『エリオット『全集第五巻』中央公論社(一九六〇) D・H・ロレンス『現代人は愛しうるか(アポカリプス)』白水社(一九五一) C・ドーソン『進歩と宗教』学苑社(一九五二)『近代のジレンマ』創文社(一九五三)『中世文化史』元々社(一九五六) E・ベルトラム『ニーチェ』筑摩書房(一九四一) K・レヴィット『ヨーロッパのニヒリズム』筑摩書房(一九四八) K・ヤスパアス『現代の精神的課題』新潮社(一九五五) M・ハイデッガー『ニーチェの言葉・神は死せり』理想社(一九五四) S・ツヴァイク『昨日の世界』慶友社(一九五二)他にみすず書房『ツヴァイク全集』所収。G・ベン『二重生活』紀伊国屋書店(一九五八) G・マルセル『人間それ自らに背くもの』創文社(一九五八)『神の死と人間』中央公論社(一九五八) エティエンヌ・ジルソン『中世ヒューマニズムと文芸復興』白水社(一九四〇) N・ベルジャーエフ『歴史の意味』白水社(一九六〇) 白水社より『ベルジャーエフ著作集』が出ている。オルテガ『大衆の叛逆』筑摩書房(一九五三)『危機の本質』創文社(一九五四) L・シェストフ『悲劇の哲学』創元社(一九五二)『虚無よりの創造』創元社(一九五二) O・シュペングラー『西欧の没落』批評社(一九二六) ロゲンドルフ「ヨーロッパの危機」弘文堂(一九五一)
なお、ショオペンハウエル、マルクス、キェルケゴール、ニーチェ、ドストエフスキー、フロイド、ジイド、森鴎外等の人々は、その生涯と仕事全部を通じて、なんらかの意味で「反近代の思想」の系譜に属する人々であることを、付記しておく。これらの人々の全集こそ、もっとも重要な「参考文献」であるといってよい。