福田氏が恐らくは最も率直に自らの自然觀と人間觀とを語つた著作。『人間・この劇的なるもの』、福田譯・D.H.ロレンス著『默示録論』と併讀する事で、福田氏の藝術觀と人間觀・文明觀をより深く理解できよう。
ほかに新潮社版「福田恆存著作集→福田恆存評論集」、文藝春秋版「福田恆存全集」、麗澤大學出版會版「福田恆存評論集」に再録されてゐる。
卷末に「あとがき」。
《藝術と文明》といつても、それは兩者の相關關係について解説したわけではありません。《藝術と文明》といふ副題の眞意は、現代文明に抵抗を感ずる藝術の危機といふことにあります。今日、藝術の本質を――いひかへれば、藝術とはなにかを――語らうとするならば、さういふ角度から語る以外に方法はないと、ぼくはおもつてゐます。ひとつの藝術作品の美について語りあひ、その感動をわけあふためにも、あらかじめこれだけの地盤を設定しておく必要があるとおもつてをります。そして、一度それができあがりさへすれば、それこそあとは一行でことたりるでせうし、あるひは無言のうちに共感が成立するでありませう。すなはち、藝術とはなにかなどといふやぼな問ひも答へも不必要になるのです。
最後にお願ひとして讀者諸君の讀後感をきかせていたゞければありがたいとおもひます。と云ふ一文を插入した上で、「あとがき」として單行本に收録された。