公開
2006-02-27
改訂
2017-06-09

『藝術とはなにか――藝術と文明――』

福田氏が恐らくは最も率直に自らの自然觀と人間觀とを語つた著作。『人間・この劇的なるもの』、福田譯・D.H.ロレンス著『默示録論』と併讀する事で、福田氏の藝術觀と人間觀・文明觀をより深く理解できよう。

書誌情報

要書房版
昭和廿五年六月卅日發行
昭和廿六年一月廿日再版
昭和卅一年一月一五日五版
日本圖書館協會選定圖書
『藝術とはなにか』要書房・要選書3(再版)
『藝術とはなにか』要書房・要選書3(第五版)
中公文庫版
昭和五十二年九月十日發行
中央公論社
解説・松原正
『藝術とはなにか』中公文庫

ほかに新潮社版「福田恆存著作集→福田恆存評論集」、文藝春秋版「福田恆存全集」、麗澤大學出版會版「福田恆存評論集」に再録されてゐる。

目次

  1. 呪術について
  2. 呪術の現代的考察
  3. 演戲といふこと
  4. 演戯精神の衰退
  5. 選民の藝術
  6. 辨證の藝術
  7. 意匠の藝術
  8. 視覺の優位
  9. カタルシスといふこと
  10. ふたゝびカタルシスといふこと
  11. 藝術とはなにか――結論として

卷末に「あとがき」。

「あとがき」より

《藝術と文明》といつても、それは兩者の相關關係について解説したわけではありません。《藝術と文明》といふ副題の眞意は、現代文明に抵抗を感ずる藝術の危機といふことにあります。今日、藝術の本質を――いひかへれば、藝術とはなにかを――語らうとするならば、さういふ角度から語る以外に方法はないと、ぼくはおもつてゐます。ひとつの藝術作品の美について語りあひ、その感動をわけあふためにも、あらかじめこれだけの地盤を設定しておく必要があるとおもつてをります。そして、一度それができあがりさへすれば、それこそあとは一行でことたりるでせうし、あるひは無言のうちに共感が成立するでありませう。すなはち、藝術とはなにかなどといふやぼな問ひも答へも不必要になるのです。

參考

「書物」昭和二十五年七月・第三號(美松書房)
「藝術とはなにか」より「選民の藝術」を轉載、「著者のことば」を掲載してゐる。「著者のことば」は、末尾に最後にお願ひとして讀者諸君の讀後感をきかせていたゞければありがたいとおもひます。と云ふ一文を插入した上で、「あとがき」として單行本に收録された。
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