公開
2006-01-14

『私の演劇白書』

『私の演劇白書』新潮社
昭和33年12月10日發行
昭和43年7月10日二刷

目次

一 「大衆漬劇」を斬る
三十二年四・五月
蟹の町――俳優座――
陽氣妃――文學座――
バス・ストップ――藝術座――
子を貸し屋――新派――
金閣寺――新派――
二 飜譯劇を衝く
三十二年五・六月
トロイ戰爭は起らないだろう――劇團四季――
漁船天佑丸――劇團民藝――
正義の人々――文學座・作品座――
白いねずみと黒いねずみ――劇團仲間――
三 「他流試合」を顧みる
三十二年八月
朝の躑躅――新派――
秋草物語――藝術座――
明智光秀――文學座――
四 リアリズムに還れ
三十二年八月
火の山――俳優座――
五 劇作家は孤立すべし
三十二年九月
島――劇團民藝――
おんによろ盛衰記――ぶどうの會――
女優の死――青年座――
六 誤れる喜劇觀
三十二年十・十一月
ウィンザーの陽氣な女房たち――俳優座――
シナの長城――劇團仲間――
お月樣のジャン――文學座――
七 過てる演出
三十二年十一月
守錢奴――文學座――
楡の樹陰の欲情――劇團民藝――
新作狂言 十字架――カトリック同志會――
八 造られた入氣
三十二年十一・十二月
勸進帳――前進座――
寂しき人々――小山内薫三十周年記念公演――
九 本物の人氣
三十三年一月
デン助――デン助一座――
女劍劇――大江美智子一座――
松竹歌劇――松竹歌劇團――
風雪三十三年の夢――藝術座――
十 新劇の「近松ブーム」
三十三年二・三月
孃景清八島日記――文樂座――
つづみの女――俳優座――
十一 新劇役者の不安
三十三年二・三・四月
人と狼――文學座――
ある尼僧への鎮魂歌――新人會――
堂々たる娼婦――青年座――
ガリレオ・ガリレイの生涯――青年劇場公演――
人形の家――劇團民藝――
十二 新劇五十年の迷ひ
三十三年五月
景清・湯谷――喜田流春季別會――
國姓爺――文學座――
法隆寺――劇團民藝――
十三 日本新劇史概觀
十四 劇評家への苦言
あとがき

「劇評家への苦言」より

二十年前の私はバーナード・ショウを輕蔑してゐた。が、現在の私はかれを高く評價する。この私自身の變化を私が變化と認めるのは、私が二十年前に讀んだときと全く同じ形の變化せぬ作品を、今もなほ讀むことが出來るからだ。現在の私は過去の私の鑑賞力を批判することが出來る。その當否を確かめることができる。のみならずショウの作品について書かれた數十年前の他人の評論を讀み、その批評の適否やその評者の鑑賞眼を測定することが出來る。作品が殘つてゐるからだ。批評が作品を裁いてゐると見えるのは、その當座だけである。長い年月の間には、作品もまた批評を裁く。その裁きの方がはるかに深刻だ。もしさういふことがなければ、批評はどんなでたらめでもいへることになる。

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