制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2011-08-19

C.D.ルーイス著・深瀬基寛譯『詩をよむ若き人々のために』

書誌

日本版のはじめに

……。

日本にはむかしからご承知のとおり和歌とか俳句とかいう種類の詩が連綿として存在しておりますが、これらは特に日本的な詩の在りかたというべきものでありまして、世界が一体となるべき遠い将来の詩の在りかたがこのままでいいということにはなりません。日本の伝統は非常に大切なものであって簡単に是非することはまちがいですが、第二に大切なことはこの伝統を養うべき養分は大部分将来は外国から摂取しなければならないということです。現にイギリスで最も有名な詩人エリオットもいっているように「いかなる単一の国民も、いかなる単一の国語も、もしも同種の芸術がその隣りの国々において別種の国語を以て培養されていなかったばあいには、けっして現に見られるだけの成果を挙げることはできなかったであろう……各国がお互に遮断されて、詩人たちがどの国の文学ももはや自国語でしかよまないというばあいには、すべての国の詩が必然的に頽化せざるをえない」のです。……。

inserted by FC2 system