制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2011-08-19

アイザックス著・深瀬基寛・大浦幸男譯『現代英詩の背景』

書誌

"The Background of Modern Poetry"の全譯。

はしがきに代へて――或る日の學生との對話――

「ところが困つたことには、英文學史の多くは、シェイクスピアがどういつたとか、ワーヅワスがどうしたとか、誰がどんな作品を書いたかとかいふ單なる事實の列擧に留まつてゐる。私たちが知りたいのは、ばらばらの歴史的事實ではなくて、いろいろの作家の作品が互ひにどういふ影響を與へたかといふ作品間の關聯性なのだ。だいたい一人の詩人が詩作する場合には、自分の頭だけで、無から有を生みだすみたいに忽然とすぐれた詩を産みだすものではない。ふつう過去または現在の詩人のたくさんの作品を讀み、それに直接間接に影響されて創作するものだ。だから一人の詩人がどういふ作家のどういふ點に興味を感じて、それを意識的、または無意識的に自分の詩に吸收したかを示すのが、いはば文學の生きた歴史なのだが、さういふ詩の連鎖關係を説いた本が、不思議なことには實はほとんどなかつたのだ。ところが數年前にアイザックスといふ人の『現代英詩の背景』といふ小さい本が出たが、これがその點でたいへん面白い。現代英詩が産れるに至つたいきさつを縱横むじんに、實に明快に説いてゐる。」

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