以下は全て土居光知譯による。
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いま陰險な蝮のやからは
柔和さうに しすましてゐるが、
正しい人達は獅子のすむ
荒野に憤る。……
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對立なくては進歩はあり得ない。陽と陰、理と力、愛と憎しみとが人間の存在に必要である。
これ等の對立から宗教家の所謂善惡が生じた。善とは理に從ふ受動的のもの、惡とは力より生ずる能動的なものである。
善は天國、惡は地獄である。
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十二分にすることが智慧の宮殿への道。
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欲望をいだきながら實行せぬものが惡疫を生ぜしめる。
切られたみゝずは鋤をとがめぬ。
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愚者と賢者は同一の木に對しても同一の木を見ない。
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古の詩人達は萬象の中に神や守護精靈を感じ、神々を呼ぶにそれぞれの名を以つてし、森、河、山、湖、市、国の屬性や詩人の霊妙多感な官能が認め得た性質を以つて神々を飾つた。
就中彼等は各地の都市や國家の精神に心をひそめ、その市や國を各獨特な、心の中の神のもとに置いた。
かくて遂に宗教が組織立てられ、それを利用するものがいで、市や國からこの心の中なる神を引き離し、具象化或は抽象化することによつて衆俗を歸依せしめた、こゝで僧侶なるものができた。
詩的説話から宗教の儀禮を選定しながら。
そして最後に神々がかゝる儀禮を命じたと宣言した。
かくて人々は全ての神が人間の心の中に住むことを忘れた。
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そこで天使は言つた。「これはお前の空想の押し付けだ。耻を知れ!」
私は言つた。「押し付けあひは御互樣だが、分析論の他に仕事のないあなたと話をするのはただの時間つぶしです。