T.E.ヒューム(Thomas Ernest Hulme)
人物
- イギリスの「思想家」「哲學者」「詩人」であるが、さう云つた分類は意味をなさない。
- 早くに死んだ所爲もあつて著作は大變に少く、主要な文章はSpeculationsとFurther Speculationsの僅か二册に纏められてゐるのみ。然るにイギリス藝術界に與へた影響は多大で、その名は永遠に記憶される事だらう。
- その主張は、ベルグソンの影響を強く受けたもので、現實から遊離した抽象的・記號的な言語に強烈な反感を示し、具體的・具象的な表現を用ゐた詩と云ふ形態において言語を本質的に「身近」なものへと囘歸せしめんとしたものであつた。
- 所謂イマジズムの創始者であり、パウンド、T.S.エリオット或は日本の英文學者・詩人に強い影響を與へた。
近代化(=ロマンティシズムや革新主義)に抵抗する反近代の思想をイギリスで提唱した最重要人物。保守主義の王國・イギリスにおいて、ヒュームの成し遂げた藝術の「革新」は、「反動」以外の如何なる形でもあり得なかつたが、それが「新しい」と看做されるところにイギリスと云ふ國のイギリスたる所以がある。日本では單なる危險思想として片付けられ、異端以外の何ものでもあり得ない保守主義・反動であるが、それを正當に歴史の中に位置附け、正統の發展の形態として認めるところがイギリスらしい。日本人がイギリスに學ぶべき事である。
Speculations/邦譯:ヒューマニズムと芸術哲学
- ヒュマニズムと芸術哲学
- 長谷川鉱平譯 寶文館
- ヒュマニズムと芸術の哲学
- 長谷川鑛平訳 法政大学出版局
- 古典主義とロマン主義
- T・E・ヒューム/J・M・マレー 戸田仁編著 旺史社
- クラシシズムとロマンティシズムに關する二者の論文。
Further Speculations/邦譯:塹壕の思想など
- 塹壕の思想
- 全譯 長谷川鉱平訳 法政大学出版局(叢書・ウニベルシタス)
- T・E・ヒュームのイメージ論
- 高田美一編・監訳
- 「塹壕の思想」
- 中村保男譯 「批評」連載
邦譯:詩
- 世界名詩集大成第10巻 イギリス篇(2)
- 平凡社
- 世界名詩集大成(全18巻)の<9〜11>イギリス・アメリカ - 武蔵野日和下駄