制作者(webmaster)
野嵜健秀(Takehide Nozaki)
公開
2001-08-27
改訂
2011-03-21

葦津珍彦『天皇 日本人の精神史』

書誌

本文の表記は神社新報社の規定に從ひ、新漢字正假名遣。

目次

第一部
対話―皇室の精神史
日本天皇と外国の元首
対話―天皇と戦争責任
革命と反革命
第二部
帝王、大統領、独裁者
明治民權家の天皇理論
中江兆民の帝国憲法解釈

「序」

現代日本人の思想には分裂と混乱の情況が見られる。本書の著者は、この表面的な混乱情況にも拘らず、日本人の精神的心理的本質の根は未だ抜きがたい底力を確保してゐると信じてゐる。しかし少なくとも表に現はれた社会現象として見るかぎり、日本人が、日本人としての共通の意識を失つてゐるかのやうにさへ思はれる情況を呈してゐるのも否定しがたい。

政治についても社会問題や道徳問題についても、日本人と日本人の間でまったく対話の通じないかのやうな、鋭い対決と混乱が見える。どうしてこのやうに日本人の精神が混乱するにいたったのか、どうしてこの危機現象が生じたか。

問題は、あらゆる局面に及んでゐるが、その中枢は、日本人が日本の精神史の中枢バツクボーンたる「天皇観」について、あいまいになってゐるからだ、と信じてゐる。混乱はこの一点から、すべての局面へ波及して行く。

……。

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